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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第4巻  作者: 妄子《もうす》
42.ラロスゼンロ決着

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その9

 3日後、帝国軍は、バルディオン軍と示し合わせて、スヴィアの拠点へ向けて出撃した。


 とは言え、そのまま攻める訳ではなく、それぞれの軍は、それぞれ本陣を設置し、陣形を整えた。


 本陣は、言うまでもなく、各軍の指揮所であり、そこで指揮官が采配を振るうことになる。


 また、一旦、立ち止まることにより、両軍の連携を高め、より効率的な攻撃が出来るのであった。


「貴公達、逸るでないぞ。

 うっかり、陣頭に立って鉄砲の餌食とかになるなよ」

 マイラック公は、これは自分の言葉なのかと思う程、柄にないことを言っている自覚があった。


「承知しております」

 リーラック伯は、苦笑いしながらそう言った。


 伯は、先鋒を任されていた。


 そして、その重要性は良く分かっていた。


 だが、何時にない公の慎重姿勢に驚きを超えていたのだろう。


「我も、承知しております。

 そして、リーラック伯と同様、昔と戦い方が変化して事も分かっております」

 スベリア伯も、リーラック伯に同調するように言った。


 スベリア伯は、先鋒部隊のリーラック伯の戦い振りを見た後に、投入されることになっていた。


 所謂次鋒的な役割である。


 マイラック公は、じっと2人を見据えた。


 2人の伯爵も、じっとマイラック公を見た。


 どうやら、油断の欠片もないようだ。


「分かった。

 貴公達の武運を祈る」

 マイラック公は、いつもの自分に戻っていた。


「はっ」

「はっ」

 リーラック伯とスベリア伯は、直立不動に立ち上がると、敬礼した。


 マイラック公も立ち上がると、答礼した。


「では、行って参ります」

「では、行って参ります」

 リーラック伯とスベリア伯は、ハモるように言うと、出撃していった。


(兵力を損なうことのないようにか……)

 2人を見送ったマイラック公は、大公の言葉を思い出していた。


 無論、公は兵を無駄に損なうことは考えていない。


 総司令官としては、当然の事である。


 だが、その言葉の意味は、違ったものを含んでいるように感じられた。


(殿下は、恐らくリーランを最大限に警戒なさっている事は確かだ)

 マイラック公は、そう感じていた。


 そして、場合によっては、リーランの動きを封じる為にも、大規模な軍事行動を起こすことも予想が出来ていた。


 先の第4次アラリオン海海戦は、もしかしたら、その呼び水になるような雰囲気さえあった。


(となると、ワタトラ伯を始め、バルディオン王国の海軍の力が必要となる。

 だからこそ、ここでの戦いは、手を抜く訳には行かないんですよ)

 マイラック公は、大公に対して、心の中でそう呼び掛けた。


 でも、まあ、そんな事をしても無駄だと分かっていたので、苦笑いしていた。


 そこに、1人の男が陣幕内に入ってきた。


「閣下、ただ今戻りました」

 声の主は、総参謀長のウドベリ伯爵だった。


「おお、ご苦労様」

 マイラック公は、何時になく、口うるさい総参謀長を歓迎していた。


「……」

 それを見たウドベリ伯は、一瞬反応に困った。


 が、それはそれである。


 ウドベリ伯は、姿勢を正して敬礼した。


 それに対して、マイラック公は答礼し、解除した。


 それを見たウドベリ伯も、手を下ろした。


「ここに来る途中に両伯に会いましたが、何やら慎重になさっているとのことですね」

 ウドベリ伯は、戸惑いながらも安心したような感じだった。


「ああ……」

 マイラック公は、何だか居たたまれない気持ちになっていたのは、言うまでもなかった。


「懸命なご指示だと思います」

 ウドベリ伯は、真面目な顔をしてそう言った。


 うん、軍人たるもの、こうあるべきだという事を完全に体現していた。


「とは言え、きちんと戦って、戦果を上げねばならない。

 バルディオン王国に示しが付かないからな」

 真面目な顔で言われたので、マイラック公も真面目にそう言った。


 これが、軍人たるものの普通なやり取りである。


「仰る通りでございます。

 ただ、『慎重に行動せよ』と『戦果を上げよ』は、両立する命令だと存じます」

 ウドベリ伯は、更に真剣な表情になった。


「確かにな」

 マイラック公は、自分が如何に慣れていないことをやっていたかを痛感していた。


「……」

 ウドベリ伯は、公が納得してくれたので、安心した。


「ところで、貴公は何故戦場に出てきたのだ?」

 マイラック公は、いつもの自分に戻ったので、疑問点を質問した。


 そう、ウドベリ伯は、ここまで前線に出てくる人物ではないのである。


 戦いが始まると、後方で兵站を担当する役割をするのがいつものパターンである。


「今回の戦いで、私の方から何も進言してませんでしたので、気になってきました」

 ウドベリ伯は、素直にここに来た目的を話した。


「……」

 マイラック公は、天を仰いでいた。


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