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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第4巻  作者: 妄子《もうす》
42.ラロスゼンロ決着

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その5

「つまり、閣下は、シーサクは援護に向かえないと仰るのですか?」

 フィルタは、サラサの仕草を見て尋ねた。


 と言うより、納得した顔をしていた。


「そういう事ね。

 もしくは、向かうのにはかなりの手間が掛かるでしょう。

 そして、手間を掛けたのに、間に合わないという事も十分あるでしょうね」

 サラサは、地図を指しながら、シーサクはラロスゼンロを大きく迂回しないと言えない事を示していた。


 勿論、表情はニヤリとしていた。


 このニヤリは、味方が有利だからと思いたいですね。


「成る程」

 フィルタは、唸るようにそう言った。


 とは言え、これではまだまだである。


 そう感じたのは、バンデリックである。


「閣下、東の拠点に戦力を集中させると、ラロスゼンロの守りが薄くなります。

 シーサクは、援護に向かうのではなく、ラロスゼンロに殺到するのでは?」

 バンデリックは、更に議論を続ける為の質問をした。


 それを聞いたフィルタは、また成る程と思っていた。


「それは、考えられる手ね。

 と言うより、そうしてくる可能性の方が高いわね。

 何せ、ラロスゼンロを落とす為にここまでやって来たのだから」

 サラサは、ご苦労様とばかりにそう言った。


(考えてみれば、その通りだ。

 これは不味いのでは?)

 フィルタは、自分の思考の浅さを痛感していた。


「そうなると、ラロスゼンロは守り切れますかな?」

 バンデリックは、フィルタが黙ってしまっているので、更に尋ねる事にした。


「艦隊参謀長の言いたいことは分かるけど、問題ないんじゃないかしら。

 2つの拠点から同時に攻められた場合は、ラロスゼンロの戦力だけだと確かに落とされる可能性の方が高い。

 だが、その半分となれば、何とかなるんじゃないかしら。

 それに、後詰めである第1軍、勿論出撃しているのは半分程度だけど、その戦力が予備兵力として、後方に待機しているしね。

 いざとなった場合は、それを投入すれば、戦線は維持出来るでしょう」

 サラサは、バンデリックの質問に対して、スラスラと対応先を述べた。


 まあ、これは当初決まっていた事である。


 第1軍の半数は、補給を担っていたが、場合によっては戦線参加させる事は想定されていた。


 そして、その補給は、王都に残っている残りの第1軍が担うことになる。


 そして、王都の防衛は、第5軍が代わることになっていた。


 こうした軍編成は予め想定していた通りである。


 と言うか、この事は、バンデリックも分かっていたことだった。


 なので、フィルタの今後の為を思っての質問だったのである。


「……」

 その当のフィルタだが、黙ってしまっていた。


 思考が止まっていた訳ではなく、2人が言っていることを理解しようと必死になっていたからである。


 ……。


 とは言え、しばらく沈黙が続いた結果、議論の終わりを告げていた。


 めでたしめでたしとはなりませんねぇ……。


「もうやることは決まっていたのだから、帝国軍の奴ら、さっさと来るべきだったのよ!」

 サラサは、急に悪態をつき始めた。


 今までよく我慢したもんだと思わなくはなくもないのである。


 とは言え、それを見たフィルタは固まり、今度こそ思考停止していた。


 バンデリックの方は、慣れているのでやれやれと思っていた。


「向こうも都合が合ったのでしょう……」

 バンデリックは、なるべく柔らかくそう言った。


「都合?

 こっちだって都合があるのに、無理矢理合わせているじゃない!

 それなら、向こうも合わせるべきよね!」

 サラサは、更にあくどくなっていた。


(失敗だった……)

 バンデリックは、思わず頭を抱えたくなった。


 だが、ここで頭を抱えては行けない。


 そして、バルディオン王国が帝国に従属している立場だという事も言ってはいけない。


「まっ、それそれとして、今は、これからの事がより重要なのでは?」

 バンデリックは、なるべく寛容さを見せ付けるようにそう言った。


「まあ、確かにそうよね……」

 サラサは、渋々バンデリックに同意した。


 それを見たフィルタは、バンデリック株を暴騰させたのは言うまでもなかったのだった。


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