その3
サラサは何故かドヤ顔だった。
きっと、後進の教育をやったという達成感だろう。
まあ、その辺は、気が付いていても指摘しないのがバンデリックであった。
流石である。
バンデリックにとっては、後進の教育などは、誰の手柄でもいいのである。
それよりも兎にも角にも、優秀な人材を増産する方が大事である。
それに、サラサはそっち方面に才がないのは明らかである。
サラサがいくら戦術面、戦略面、そして、統率能力と言った面で天才であっても、全ての面で天才である事は有り得ないのである。
何故か、変換候補に優先的に、天災が出てくるだけど……。
そう、天才というものは、自分が手来ている事が何故他人に出来ないのかが理解出来ない時がある。
故に、天才が天災だと言われる所以でもある。
うん、違うねぇ……。
それはそれとして、サラサにはいい気分で居て貰って、その間に、バンデリックが教育を施す。
これは、非常に理に適っていると言えた。
「で、話をずっと先の元に戻すけど、デメリットとは?
まだ、言い足りないのでは?」
バンデリックは、自分で話を続けようとしないサラサに促す事とした。
「ああ、連携面に関しては言ったわよね。
それは、まあ、拠点が離れていない場合にも言える事だけど、今回のような配置の場合、問題となるのは、攻められた時よね」
サラサは、促されるまま話を続ける事とした。
「と言いますと?」
今度はフィルタが話を促した。
それを見て、バンデリックは満足そうに頷いた。
「それは、援軍として帝国軍がやって来た事にも起因するわね」
サラサはそう言うと、帝国領の都市エメンから、バルディオン王国の都市パンマジュダードを指でなぞった。
つまり、敵国軍の援軍は、そのルートで援軍を送ってきたのだった。
そして、パンマジュダードを拠点として、軍事活動を行うのであった。
「随分と長い距離をやって来てくれたのですね」
フィルタは、目を輝かせてそう言った。
サラサが指でなぞった距離に感動しているようだった。
だが、その発言に対して、バンデリックは無言で首を横に振った。
明らかに、やらかしたといった感じである。
口に出さないのは、話がややこしくなるからである。
この物語の登場人物がよくやる手である。
「あら、あたし達の方がとんでもない距離を移動していると思うけど!」
サラサは、フィルタの指摘に対して、あっさりと否定した。
「……」
フィルタは、サラサがそう言った事に対して、唖然としてしまった。
とは言え、まあ、その通りではある。
サラサ艦隊は、前々回の援軍では、マグロッドを遙かに越え、スヴィア王国のヒューダボルズまで遠征したのだから。
地上を突っ切る事が出来ない艦隊なので、かなりの遠回りである。
なので、距離にしてみれば、倍どころではないだろう。
だが、それを今言うか?
まあ、そんな事より、バンデリックが何故ダメ出しをしたのかが、分かったフィルタだった。
と言う事は、サラサの副官としては、こう言った話の進め方は良くないという事を学習したのだった。
サラサは天才ではあるが、その分、気持ちよく話をさせないと話が進まなくなる。
うん、厄介ですなぁ……。
「でも、まあ、折角来てくれたんですから、歓迎しないと」
バンデリックは、仕方なく助け船を出した。
そう言われると、フィルタの手前、サラサも子供っぽさを封印しないといけなくなる。
流石であった。




