その2
「そうね、もうちょっと考察しましょう」
サラサは、フィルタの方を見てそう言った。
フィルタは、有り難いと思った。
(あっ、逃げたな!)
バンデリックは、騙されなかった。
とは言え、これはあまりにも酷い反応である。
だって、あんた、自分で振ったでしょうが!
「現在、ラロスゼンロは、後ろに回り込まれるのを防いでいるとは言え、左右から挟撃されている。
これは、非常に苦しい状態ね」
サラサは、ラロスゼンロの北側から、ラロスゼンロの東西を指した。
その東西の位置に、敵の橋頭堡と呼ばれる拠点があった。
東にはシーサク王国、西にはスヴィア王国の拠点といった具合で、陣地を完全に分けていた。
なお、バルディオンの方は、ラロスゼンロをエルドラン侯が守っていた。
そして、遊撃部隊として、ラロスゼンロの北側に敵を侵入させないように、サリドラン侯が動いていた。
2人とも性格はややねじ曲がっているかも知れないが、軍指揮官としては、まとものようである。
敵の攻撃を上手く凌いでいた。
その点では、ねじ曲がった性格などどうでもいいのかも知れない。
少なくとも、サラサはそう思っていた。
面倒臭いとは思ってはいたが……。
「敵の方は、陣地を分けるメリットは存分に発揮されていますな。
陣地を分ける事で、統制が取りやすいですからな」
バンデリックは、サラサの説明に付け加えるようにそう言った。
フィルタは、説明を聞きながら成る程と頷いていた。
「まあ、確かに、それはメリットでもあるわね」
サラサは、含みのある言い方をした。
フィルタは、納得顔から?な顔へと表情が変わった。
見ていると面白いものである。
とは言え、貪欲に学ぶ姿勢は大したものである。
少なくとも、サラサとバンデリックにはそう映っていた。
「ただ、やはり、連携という面ではやや問題ありといった感じね」
サラサは、その含み部分を口にした。
「そうですね。
微妙なタイムラグがあり、そこを尽かさず、エルドラン侯が叩いてますね」
バンデリックは、味方を褒めた。
「うーん」
フィルタは、思わず唸ってしまった。
報告は、まずフィルタの元に集まってくる。
なので、それは良く分かっているつもりである。
だが、ただそれを右から左に流しているだけのような気がしてきた。
「どうしたの?フィルタ」
サラサは、フィルタの表情を見て、一旦立ち止まる事にした。
「いえ、両閣下は、どうやって、離れた戦場の状況を把握しているのかと思いまして……」
フィルタは、素直に今の気持ちを話した。
「一つ一つの情報を繋ぎ合わせているだけよ」
サラサは、あっさりとそう言った。
「……」
フィルタは、何とも言えない表情になった。
まあ、説明が足りないよね。
「まあ、難しいよな」
バンデリックは、少し笑いながらそう言った。
馬鹿にした笑いではなく、優しい笑い方だった。
「まずは、今の任務に集中する事を考えなさい」
バンデリックは、諭すようにそう言った。
まあ、いきなりは無理だと判断したのだろう。
「はぁ……」
フィルタは、当然のようにやるせない気持ちになっていた。
「この戦いの報告書はいずれ上がってくる。
その時、今やっている仕事と、その報告書を照らし合わせてご覧。
それを繰り返しているうちに、情報をどうやって繋げていくかが分かるから」
バンデリックは、そう説明した。
流石に、迷将とは違い、何が問題なのかがよく分かっている人物の説明だった。




