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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第4巻  作者: 妄子《もうす》
42.ラロスゼンロ決着

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その1

 太陽暦538年6月、リーラン王国で亡命騒ぎが起きていた頃と同時並行で起きた出来事である。


 この月、帝国は、電撃的にラロスゼンロへ援軍を送ったのであった。


 しかもそれを指揮するのは、軍総司令官であるマイラック公爵だった。


 つまり、帝国の最精鋭軍である。


 援軍は、半端な数ではなく、バルディオン陸軍の1軍に相当する2万余の軍勢を投入してきたのである。


 帝国軍の本気振りが伺えた。


 当然、帝国の内部で反対する者がいたのは言うまでもなかった。


 宰相のフレックスシス大公である。


 だが、これまでのバルディオンからの援軍に対して、このままでは礼を失すると、公爵が強く発言したのだった。


 それにより、大公は渋々了解し、今回の派兵となったのだ。


 ま、要するに、サラサの度重なる出征、しかも、いずれも多大な功績を挙げた事によるものである事は、言うまでもなかった。


「帝国軍は、現在、ラロスゼンロの西側の敵拠点に攻撃を仕掛けているとの事です」

 フィルタは、サラサのそう報告した。


 敵軍は、ラロスゼンロの東西に攻撃拠点を設けて、挟撃していたのだった。


「そう……」

 サラサは、関心なさそうにそう言った。


 戦好きとは言え、自分と関わりのない戦いには、関心がないようだった。


 なので、目の前の仕事に集中していた。


 やはり、勤勉なサラサであった。


 ん?何か違うねぇ……。


「あの……」

 フィルタは、サラサの反応が鈍かったので、確認しようとした。


 だが、傍らにいるバンデリックに、目で制された。


 不審に思ったフィルタだったが、サラサの行動に対してのバンデリックの制止。


 この制止に従って、悪かった事は一度もなかった。


 なので、手で慌てて自分の口を塞いだ。


 かなりオーバーアクションではあるが、そんな事はどうでもいい。


 そんな事より、退避行動が先である。


「ああ、もう!

 援軍送るのなら、もっと早くにしてよね!」

 サラサが、暴発したのだった。


 サラサが今取り組んでいるのは、ラロスゼンロに関する書類であった。


 現地にいるロンデリックから、あれしてほしい、これしてほしいという要望を捌いている最中だった。


 一応、国防委員会宛ての書簡であるが、処理するのは提案者であるサラサがやらなくてはならなかった。


 平時でもややこしい仕事なのに、現地では戦闘中である。


 それによって、仕事が単純になる筈がなかった。


 あっ、まあ、ラロスゼンロが陥落すれば、別なのだが……。


 それはさておき、サラサの苦労が報われた援軍である。


 そう邪険にしなさんなと言いたいが、まあ、分からなくもない。


 ラロスゼンロで戦闘が起きる事は事前に分かっていたのだから、その前に派遣してくれた方が良いのである。


 あっ、でも、それでも、サラサの仕事量としては、減らないか……。


「ああ、もう一層の事、西の拠点だけではなく、東の拠点……。

 いえ、一層の事、大軍をスヴィアやシーサクに送り込んで、両国をやっちゃってほしいわよ!」

 サラサは暴発に任せて、言いたい事を言った。


「……」

 フィルタは、安全な所に退避済みで、キョトンとしていた。


 と同時に、バンデリックに感謝していた。


 良かった、良かった。


「で、鬱憤は晴れましたかな」

 バンデリックは、サラサの傍らで静かにそう言った。


「全然……」

 サラサは横に首を振ったが、流石に冷静になっていた。


 まあ、そう言っている時点でそうなのは明白だった。


「ならば、仕事をしますか?

 この件に関して、考察をなさいますか?」

 バンデリックは、呆れながらもサラサに選択権を与えるのだった。


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