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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第4巻  作者: 妄子《もうす》
41.亡命騒ぎ

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その25

「畏まりました。

 その条件をお受け致します」

 元伯としては、その条件を受け入れるしかなかったのだった。


 エリオは、人でなしである。


 俺なんかやっちゃいました的な感じでいるのだが、弱味を見付けたら本当に容赦ない。


 と言う事は、なんかやったいましたではなく、確実にやってお仕舞いって感じか……。


「いやいや、元伯、それは条件の前段階」

 エリオは、サラッと追い打ちを掛けた。


「!!!」

 元伯が、絶句したのは言うまでもなかった。


 そして、第2次スワン島沖海戦で感じた恐怖は間違いなかった事を確信した。


 思い出してみれば、その後の講和会議も一方的だった事を思い出していた。


 となると、考える事は一つである。


 亡命先を間違ったと言う事である。


 ただ、これは正しくはなかった。


 元伯にとっては、選択肢がなかったのである。


 あの時、決断していなければ、元伯とは言え、処分されていた事は間違いがなかった。


 なので、元伯の決断は間違いではなかった筈であると思いたいのであった。


 まあ、確かに世の中、死んだ方がマシという場面がない訳ではない。


 筆者としては、それを勧めるつもりは毛頭ないが、人間の想像力など簡単に吹き飛ぶ状況など、いくらでもあるものである。


 願わくば、そう言った状況に陥らない事を願うばかりである。


「貴官に対して、中佐待遇を与える。

 と同時に、我が海軍の訓練を受けてもらう」

 エリオは、元伯の気持ちなどお構いなしに話を進めた。


 人でなしエリオの本領は、実はここからであった。


 人間、人を軽々しく評価してはいけないねぇ……。


「訓練ですか……?」

 元伯は、思わぬ単語が出てきたので、明らかに戸惑っていた。


 と同時に、安堵感が生まれた。


 それは、大丈夫なのだろうか?


「我が海軍は、その訓練を受けた精鋭ばかり」

 エリオは、誇らしくそう言った。


(私、その訓練受けた事ないです……)

 傍らにいた3人は、そう思っていた。


 と同時に、あんたもねという思いがあった。


 そう、その訓練は特別な者以外は、受けた事がないものであった。


 そうなのである。


 考えてみれば、クライセン一族の訓練は、親類縁者がそれぞれ行ってきていた。


 そう言う所から考えると、やはり、特別な者以外はそう言った事をしないのであった。


「なので、その訓練を受けない限り、一族の人間が認めないのでな……」

 エリオは、仕方がないと言った感じで言った。


 ……で、その雰囲気作りをしているのは明白だった。


(大嘘!!)

 傍らの3人は、更に突っ込みたかったが、口には出さなかった。


 いつもの事だからだ。


「承知しました」

 元伯としては、逃げ場がない以上そう言う他なかった。


 本当に人でなしである。


 人を完全に嵌め込んで、こういう要求をしてくるのだから……。


「ならば、起請文を頂こうか」

 エリオは、堂々たる態度でそう言った。


「はっ」

 元伯は、懐から封書を取り出した。


 シャルスは、元伯に元に行き、その封書を受け取った。


 そして、それをエリオに渡した。


 エリオは、封書の中身を確かめた。


「うん、問題ない。

 これで、貴官の亡命は認められた事になる」

 エリオは、そう言うと、封書から視線を元伯に戻した。


「はっ、ありがとうございます」

 元伯は、ここで漸く安堵したのであった。


「ところで、フランデブルグの名はここでも使うのか?」

 エリオは、安堵した元伯に質問した。


「はい、ご不快でないのなら……」

 元伯は、エリオにお伺いを立てた形にした。


「いや、こちらの方は、問題ない」

 エリオは、そう答えた。


「ありがとうございます」

 元伯は、心からお礼を言った。


 フランデブルグという名は、名跡を継いだ事で、ここまで成り上がったものであり、愛着があったからだった。


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