その24
月が改まった太陽暦538年7月、5人の亡命者達が王都に送られてきた。
これまでの調査で、5人の安全性は確認済みであり、今後の処遇をどうするかに焦点は移っていた。
そこで、個人面談となった。
まずは、フランデブルグ元伯である。
元伯は、エリオの執務室へと通された。
執務室には、エリオの他に、副司令官であるライヒ子爵、海軍総参謀長マイルスター、副官のシャルスの4人がいた。
元伯は、勧められるがままに、ソファに腰掛けた。
(知っている人間が3人、と言う事は、この人がライヒ子爵か……)
元伯は4人を見ながらそう思った。
事前に、参加者する人間は知らされていた。
なので、そういった結論に達した。
(それにしても、戦場と印象が大分違うな……)
元伯は、勿論、言うまでもなく、間違いなく、エリオを見てそう思った。
エリオは平時なので、いつもの表情だった。
あっ、まあ、戦時でも同じかもね……。
「ええっと、フランデブルグ元伯爵……」
エリオは、書類から目を離し、元伯にそう呼び掛けた。
「はい、殿下……」
元伯は、ちょっと嫌そうな表情をした。
だが、直ぐに真面目な表情に戻った。
機嫌を損ねたら、不味いと感じたのだろう。
その辺の所は、流石である。
ただ、エリオの方は、その表情が気になった。
……。
エリオの余計な気になり≪・・・・≫のせいで、沈黙が流れてしまった。
(何か、不味い事をしたか?)
元伯は、パニックになり掛けていた。
何かした覚えはないが、元伯の性格からすると、危機に敏感なのである。
そして、その分、危機回避能力が抜群に優れている。
だが、しかし、今回の場合は、どうにもこうにもだった。
「元伯……」
そこに、エリオが追い打ちを掛けるように、再び呼び掛けた。
この辺は、煽り迷人のエリオの方が一枚上だったようだ。
「はい、殿下……」
元伯は、再びちょっと嫌そうな表情をした。
そして、直ぐに真面目な表情に戻った。
「!!!」
エリオは、それを見て、得心したようだった。
「???」
当然、元伯の方は、戸惑いと緊張感が広がるのだった。
「さて、元伯、貴官を中佐待遇で、招こうと思う。
如何か?」
エリオは、ある部分を強調しながらそう言った。
他の3人が、何故か「えっ?」という表情をしていた。
(大佐じゃなかったけ?)
「はい……」
元伯はそう答えたが、それは承諾とはとても見えなかった。
「貴官は、先の戦いの責任を問われて、爵位だけではなく、軍籍まで剥奪されている。
それを勘案すると、かなり、厚遇していると思うのだが」
エリオは、何時になく高圧的に話した。
(これは試されている!)
危機回避センサーが思いっ切り反応している元伯だった。
ただ、エリオの取り巻きの3人は、かなり困惑していた。
どう考えても、エリオが碌でもない事を考えていると感じていたからだ。
そして、元伯に同情したのだった。




