その23
スッキリした表情のエリオとは対照的に、他のメンバーの表情はどんよりしていた。
何かよくある場面である。
それは兎も角として、どんよりしたのは元伯を始め、3名に待ち受ける過酷な訓練に対してである。
つまり、同情してしまったのである。
札付きのワルと称されていた海賊でさえも、エリオの指示には逆らえなくなる訓練である。
気持ちは反発しようが何だろうが、サボタージュさえ出来ないのである。
どんな魔改造を加えられるか、想像しただけでもゲンナリしてくる。
そして、それが修了しても終わらない。
実戦で、無茶苦茶な状況に追い込まれて、そこから生還する為にはエリオの言う通りに動かなくてはならない。
こうして、せんとう・ま・しーんとして改造されてしまうのであった。
ある意味、戦闘狂と言われても仕方がない悪の所業である。
「それならば、問題はありますまい」
どんよりした空気の中、クルスがそう発言した。
誰もがどんよりした感じていたのだが、どうやら、クルスだけは例外だったようだ。
やはり、クルスは、エリオとは違った逸材なのだろう。
或いは、サキュス攻防戦で、エリオのやりようを学んだ結果かも知れない。
(大丈夫か、こいつら……)
クルスの発言に更にどんよりした人物がいた。
それは、ロジオール公だった。
まだまだ現役でいるつもりではあるが、将来的には、この2人が軍の中心になる。
そうなると、歯止めが掛からなくなるのではと心配になるのだった。
そんな事は露とも知らずに、エリオは益々ドヤ顔になるのだった。
「で、この件は全て海軍府が面倒を見るという事でいいのね?」
リ・リラは、ドヤ顔をしていないで、話を進めるようにエリオに促した。
「御意」
エリオは、恭しく頭を下げた。
「それならば、わたくしの方からは、特に異論はないわ」
リ・リラは、そう言うと、ヤルスの方に視線を向けた。
「では、他に何か、意見がある方はいらっしゃいますか?」
ヤルスは、議長としての役割を果たす為に、全員に尋ねた。
……。
尋ねられた全員は、沈黙した。
色々な思惑はあるだろう。
だが、面倒事を全て海軍府に押しつけられたので、良しとしたのだった。
つまり、この時のライヒ子爵マサオは、困り顔をしていた。
「ないようでしたら、この件は、海軍府、お預かりとします」
ヤルスは、会場を見渡した後、そう会議の結論を告げた。
それを聞いたライヒ子爵は、うな垂れてしまった。
その横で、エリオは、とりあえずは終わったと言った表情をしていて、子爵の気持ちなど知る由もなかった。
そして、他のメンバー全員はしめしめと思ったのは言うまでもなかった。
まあ、書くだけ野暮だが、面倒事を全て引き受けてくれたからであるのは言うまでもなかった。
それにも気付かないエリオは、『稀代の策略家』の面目躍如と言った所だった。




