その20
「成る程!」
タロウザは、状況がまたよく飲み込めてはいなかったが、そう言った。
元伯の覚悟を読み取ったと言う事だろう。
サズーとイーグは、不安そうな表情と諦めの表情でタロウザを見た。
最終決定権は、タロウザにあるからだ。
2人は依頼者とは言え、立場がそれ程強くはない。
力関係から言ったら、今回の場合、タロウザの方が上だった。
「閣下のお見事な御覚悟、感じ入りました。
閣下とご家族の件も、私共が引き受けましょう」
タロウザは、先程までの表情とは打って変わって、決断を下した。
この決断の背景としては、ここで拒絶したらまず間違いなく面倒な事になる事が明白だったからだ。
元伯だって、覚悟なしに乗り込んでは来まい。
そして、破り捨てた手紙の件である。
連合の情報部の通達がない以上、こちらの筋の話ではない。
ならば、罠の可能性は?
なくはないが、シーサクの諜報網は、連合のそれを上回る程のものではない。
ならば、どうしてあのような手紙が来たのか?
それは、連合の情報部の更に上から来たと考えるのが妥当だった。
正直、タロウザもその組織は好きではなかった。
だが、この仕事をしている以上、逆らう訳には行かないのである。
「よろしく頼む」
元伯は、安堵の表情を浮かべ、タロウザに握手を求めてきた。
タロウザは、ニッコリしながらそれに応じた。
「ただし、時間は厳守して頂きます。
少しでも遅れた場合、閣下を置いていく事になります」
タロウザは、握手を終えた後に、ズバッとそう言った。
「それは分かっている」
元伯は注意されたが、笑顔のままだった。
その笑顔に反比例するかのように、サズーとイーグは暗い表情になるのだった。
とは言え、元伯の同行を積極的に阻止する気にはなれなかった。
2人は、何度も元伯邸を訪れた事がある。
その際に、元伯の妻や娘と対面していた。
元伯の妻は、いつもニコニコしており、夫の部下である2人に対しても優しく応対してくれた。
娘は、しっかり者で、聡明であった。
そこは、認めたくはないが、父親似である。
ただ、それだけではなく、人当たりが良く、母親似であった。
そう、元伯はともかく、この2人を見捨てるには忍びなかったのである。
元伯は、このままシーサクに留まれば、自害に追い込まれるか暗殺されるかの2択であろう。
今の所、それを覆すだけの材料はない。
そうなれば、残された2人がどうなるかは、明白だったのだ。
なので、サズーとイーグは暗い気持ちを持ちながらも諦めるしかなかったのであった。
「では、御三方、時間がありません。
後はこのように取り計らってください」
タロウザは、そう言うと、メモを3人に見せた。
3人は、そのメモを見て、頷いた。
それを確認した後、タロウザはメモを破った。
そして、先程破り捨てた手紙と一緒に燃やしたのだった。
その後、一行は、無事にルオーラに到着したのであった。
つまり、元伯の動きが掴めなかったのは、直前まで動いていなかったからだった。
単純な話である。
ま、要注意人物から外れたと言う事の方が大きいか?




