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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第4巻  作者: 妄子《もうす》
41.亡命騒ぎ

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その19

「出所はどこですか?」

 タロウザは、封筒の方をひっくり返しながら調べた。


 だが、文字はどこにも書いてなかった。


 何か仕込んであるかと思い、ひっくり返す作業を何度も繰り返した。


 でも、冷静に考えてみるとそれは有り得ないという結論に達した。


 こう言った封筒に何かを書く方がどうかしている。


「封書は、いつの間にか玄関の扉の下に挟まっていた。

 なので、誰がそれを我が家に届けたのか、知らない」

 元伯は、受け取った経緯を話した。


 元伯は蟄居を申しつけられていた。


 なので、家の周辺には監視役がいた。


 と言う事で、そう簡単には近付けはしなかった。


 えっ?じゃあ、何で元伯はここに来られたかって?


 自分の家ですからねぇ、元伯みたいな人物が抜け出すルートを持っていない筈がないのである。


「そうですか……」

 タロウザは、周囲を警戒した。


 あからさまに、キョロキョロと周囲を見渡す訳ではなく、五感を研ぎ澄ましていた。


 ただ、経験上、元伯が乱入してきた異常のおかしな雰囲気は感じ取れなかった。


 相手は、巧みに潜伏しているだけかも知れないが……。


「冗談かと思って来てみれば、2人がいたという事さ」

 元伯は、元伯で驚いていたようだ。


 当然、サズーとイーグは頭を抱えた。


 ある意味、最も見付けてほしくない人物にこうも簡単に発見されたからだ。


「で、閣下はどうなさるおつもりですか?」

 タロウザは、もう駆け引きとかしている場合ではないと感じていた。


 元伯の出方によっては、緊急事態である。


 いや、どういう出方でもここで遭遇した以上、緊急事態なのは変わりないか……。


「あっ、だから、俺と俺の家族の3人も連れて行ってくれと言っている」

 元伯は、さっき言ったじゃんかという表情だった。


「……」

 タロウザは、確かに先程聞いたが、頭が追い付いていないようだった。


 なので、無言で返してしまった。


 サズーとイーグは更に頭を抱えたままだった。


 顔すらもう、上げられないと言った状況であろう。


 ……。


 3人とも黙ってしまったので、沈黙がしばらく続いてしまった。


 元伯の方は、頼んでいる手前、返事をじっと待っていた。


(この御方は、本気なのか?

 いや、正気なのか?)

 タロウザは、完全に付いて行けていなかった。


「閣下、我々は明後日の夜明け前に出発します。

 流石にそれは無理でしょう」

 サズーは、話が進まないので、思い切って頭を上げ、現状をぶっちゃけた。


 ぶっちゃける事で、元伯が諦めてくれる事を願っていた。


 とは言え、もう結論は分かっているようでもあった。


「大丈夫、大丈夫。

 何なら、数時間後でも行けるぞ!」

 元伯は、何故か胸を張っていた。


 サズーは驚くどころか、やっぱりそう来たかという表情をしていた。


 流石に、優秀な元艦隊参謀長である。


「よろしいのですか、閣下?

 何もかも置いていく事になりますぞ」

 イーグの方も、仕方なく、顔を上げて、一応サズーの援護をしてみた。


 何時までも蹲っていても状況は打開しないと思ったのだろう。


 まあ、こちらも優秀な副官。


 事態が変わるとは全く思っていなかった。


「確かにそれは惜しいが、取りあえずは3人で持ち歩けるだけの金品だけにしておくさ。

 命の方が大事だからな」

 元伯は、後ろ髪を引かれそうな素振りはあったが、その辺は流石である。


 きちんと、今、何をすべきかがよく分かっていた。


 イーグもまた降参といった感じである。


 そして、サズーとイーグは顔を見合わせたのだった。


 伊達に世渡り上手と言われていた訳ではないと再認識したのである。


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