その18
いや、まあ、そんな事ないよね。
タロウザは、こういう仕事をしているのである。
いくら礼儀正しく人と接するからと言って、警戒心がない訳ではない。
寧ろ、接し方により、相手の反応を見ているのである。
ま、そんな事はどうでもいいぐらいに、プロであるタロウザが困惑していた。
(この人は、一体、何を言っているんだ?)
タロウザは、中々結論が出せないでいた。
「……」
何も言わないタロウザを元伯は、ジッと見ていた。
答えを待っているのは明らかだった。
だが、タロウザには、単にプレッシャーを掛けてきているように感じられた。
そりゃー、そうだよね……。
(下手な事を言ったら、通報される?)
タロウザは、極度の緊張状態に陥っていた。
不味い場面になった事は何度かある。
その為の逃げ道は用意している。
そして、そう言う時は必ずその前に異変があり、それを感じ取るのであった。
だが、しかし、今回は、違った。
隣に座られて、完全に逃げ道も塞がれた。
「閣下、失礼かと存じますが、現状がお分かりですか?」
サズーは、元艦隊参謀長らしく、元伯に尋ねた。
危機感を持っていたが、よくよく知っている元上司である。
ちょっと、呆れていた……。
「分かっている。
お前達、亡命……」
元伯は意気揚々と答えたのだが、当然、最後はサズーとイーグに口を塞がれた。
あ、まあ、当然じゃないか……。
元上司に対しての態度ではないよね。
だが、2人は構わず、思い切り口を封じていた。
「閣下、大きい声で話さないで下さい」
サズーは、そう言いながら思わず睨み付けてしまった。
(お約束以上の事をいつもする御方だな……)
イーグの方は、呆れながらもサズーに加勢していた。
自分の未来に関わる事であるから、当然である。
元伯の方は、口を塞がれながら、自分が不味い事をした事を悟った。
なので、うんうんと大きく頷いた。
「いいですね」
サズーは、もう一度念を押した。
元伯は、うんうんと更に大きく頷いた。
それを確認したサズーとイーグは、ゆっくりと手を離した。
だが、直ぐに飛びかかる体制を維持していた。
「すまん、願ってもない事だったので、ついつい声を上げてしまった」
元伯は、ヒソヒソと話した。
サズーとイーグは、元伯が約束通りの行動に出たが、当然のように安心していなかった。
共通認識で、この人は、またやらかすと思っているのだろう。
警戒心が余計に上がっているようだった。
「閣下は、どうしてここにいらっしゃったのですか?」
タロウザは、なんか変だなと思いつつ、元伯に尋ねた。
一応、話が出来ると踏んだのだろう。
「実は、このような封書が届いたのでな」
元伯がそう言うと、懐から封書を取り出した。
そして、中から手紙を出して、3人の前に広げた。
『サズーとイーグの両名、亡命を画策中』
まず目に飛び込んできたのが、その行であり、その後に打ち合わせの日時と場所が書いてあった。
タロウザは、直ぐにその手紙を破った。
「あ、ああ……」
元伯は、一瞬慌てたが、抗議はしなかった。
その行動は正しいものだと思ったからだ。




