その17
(うーん……)
タロウザは、元伯が割り込んできた時のことを思い出していた。
「なあに、大丈夫ですよ。
この手の仕事は、我々は何度も成功させておりますので」
タロウザは、サズーとイーグに向かって、太鼓判を押した。
亡命前の打ち合わせは、シーサク王国の王都ティスザサーにある酒場だった。
その酒場は、連合の、もっと言ってしまえば、連合の情報部の息の掛かった店主が経営していた。
なので、秘密は守られる。
太鼓判を押されたサズーとイーグは、互いに顔を見合わせた。
バレれば、軍法会議などに掛けられる前に処刑される重大案件である。
なので、安心することが出来ないでいた。
だが、ここまで来た以上引き返せない。
もう、この運び屋達に自分の身を委ねるしかないのである。
「よろしく頼む」
「よろしく頼む」
サズーとイーグは、タロウザに頭を下げた。
「いえ、どうぞ、頭をお上げください」
タロウザは、恐縮しながらそう言った。
と同時に、世話になるものに対して、きちんと頭を下げられる。
そうした人物を何故シーサクが評価しないのかが疑問であった。
「ふむ、成る程」
タロウザの真後ろからいきなり声を掛けられた。
「!!!」
「!!!」
サズーとイーグの表情が強ばり、固まってしまった。
「ふむ、成る程」
タロウザが後ろを振り向こうとした瞬間、その人物は、タロウザの隣に座り込んだ。
「!!!」
タロウザはあまりの事に事も出なかった。
と同時に、身の危険を感じた。
自分達の計画がバレたと悟ったからだ。
そして、身構えたのだった。
「ところで、その話、俺も混ぜてくれない」
男は、媚びるようにそう言った。
「閣下!」
「閣下!」
サズーとイーグは、同時に声を上げていた。
先程まで固まっていたのが嘘のようだった。
「……」
タロウザの方は、まだ声も出ないようだ。
「ああ、正確には、俺と妻と、そして、娘の3人」
フランデブルグ元伯は指を三本立ててそう頼んできた。
「ええっと、フランデブルグ伯爵閣下でいらっしゃいますか?」
タロウザは、先ずは落ち付こうと、確認から入った。
大体、伯爵という地位に就いている人物がこんなに平身低頭である筈がない。
と言うか、そもそもこんな酒場に来るのもだろうか?
いやいや、確か、蟄居させられているのではなかったのか!
タロウザは、色々な情報が頭の中を駆け巡っていた。
「そう、俺、フランデブルグ伯」
元伯は、確認を取られたので、そう答えた。
「……」
「……」
その答えに、サズーとイーグが無言で元伯を見詰めた。
「あっ、いや、元伯爵ね……」
元伯は、元の部下2人に訂正を求められたと思い、白状した。
だが、2人は、そんな事を望んでいた訳ではなかった。
たまに破天荒な行動を取る人だと思っていたが、ここまでとは思っていなかったのである。
だが、後でよくよく考えてみると、自己保身力の強い人間である。
このチャンスを逃す訳がないと、納得出来るというものだった。
タロウザの方は、答えを聞けたので、落ち着きを取り戻したのだった。




