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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第4巻  作者: 妄子《もうす》
41.亡命騒ぎ

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その14

 場所は、急に飛ぶ事になる。


「ところで、例の件は上手く行っているのかしら?」

 連盟の元盟主であるユリア・リオフリンがそう聞いた。


 聞いた相手は、現盟主のグルス・マドックだった。


 地位的には、盟主の方が上なのだが、まあ、俗に言う院政というヤツである。


 マドックは、ある日の晩、現状報告の為に、ユリア邸を訪れていたのだった。


 因みに、現状報告とは、連盟の政治状況の話である。


 そして、質問をしたのは、その話が終わった後であった。


「例の件とは、113号の話ですか?」

 マドックは、確認した。


「発令番号は、忘れたわ。

 今、最も重要な案件の話よ」

 ユリアは、微笑みながらそう言った。


 炉○場□△の寒々しい微笑みだった。


 なので、マドックは凍り付く思いだった。


 113号とは、フランデブルグ元伯の亡命支援を指示したものであり、暗号でも何でもなかった。


 こう言う事は、直接口にするのは憚られるのでそう言っているのだろう。


 多分、例の○2に取り付かれている訳ではないと思う。


「結果報告は受けてませんが、失敗報告も受けていません。

 としか、ご報告出来ません」

 マドックは、ユリアの微笑みに対抗する為に、敢えて変な言い回しをした。


 自分は現盟主である事をアピールしたかったのだろう。


「まあ、『便りのないのはよい便り』と言いますものね」

 ユリアの方は、そんな事を意に介さずに、微笑みながら簡単に切り替えしてしまった。


「……」

 マドックは、閉口するしかなかった。


 ユリアとマドックは同世代だった。


 そして、付き合いも長かったが、どうやってもマドックがユリアを上回る事が出来ないでいた。


 ある意味、諦めたのでこう言った良好な関係(?)になっていた。


 それをまた思い知らされる場面でもあった。


「確か、船長の名は、ボーリック……」

 閉口しているマドックに構わず、ユリアは言葉を続けた。


「いえ、今は名前と姿を変えて、リステックです」

 マドックは、ユリアの発言に訂正を入れた。


 せめてもの意趣返しである。


「そう、そのリステックが運んでいるんですもの。

 荷は確実にリーランに届いているでしょう」

 ユリアは、マドックの訂正に眉一つ動かさずに、微笑みながらそう言った。


 顔に貼り付いた微笑みではなく、本当に楽しそうである。


 ただ、薄ら寒さを覚えずにはいられなかった。


「仰る通りでございます」

 マドックは、ユリアに同意した。


 それを見て、ユリアは満足そうに頷いた。


「とは言え、フランデブルグ伯を本当に入れても良かったのですか?

 飛び入り参加みたいになりましたが……」

 マドックは、ユリアのペースに乗らないようにする為に、議題を出した。


 盟主の自覚によるものなか、ここは何としても、会談の主導権を握りたいのだろう。


 2人の面白い関係である。


 とは言え、現状を説明しに、出向いている時点で既に勝負があったようなものなのだが……。


 えっ、まあ、それより重要な事がありますね。


 そう、伯が飛び入り参加したと言う発言である。


「伯が入ったのは思わぬ収穫でしょ?」

 ユリアは、何が不味いのか分からない様子だった。


「必ずしもそうとは言えません」

 マドックは、切り返すチャンスを得たと思った。


「どういう事?」

 ユリアは、特に意外と言った感じではなく、ただただ聞いてきたようだ。


「伯が入る事で、亡命が失敗する確率が上がります」

 マドックは、ズバッと言った。


 少なくとも本人的にはである。


「ああ、それは問題ではないわね」

 ユリアは、あっさりと少し笑いながらそう言った。


「……」

 あっさりと否定されたマドックは、黙るしかなかった。


「受け入れらた場合、リーラン内部に不満の種を植え付けられるわ。

 失敗した場合でも、既にシーサクにダメージを与えているんだし、成果としてはそれだけで十分でしょう。

 隣国が混乱するのはいい事よ」

 ユリアは、微笑みながらそう言ったのだった。


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