その13
「問題は、細君とご息女だな……」
リンクは、困った顔をしてそう言った。
リンクも、他の2人も、その2人には会った事がないので、本物かどうか何て判断のしようがない。
ならば、諜報局の人間ならば……。
ま、こうしているので、そちらの方も未だ確認を取れてない。
なので、ヴェルスとラルグもお互いに困ったように顔を見合わせる他なかったのだった。
「私には、子供がいないのでよく分からないのだが、見た感じは3人は本当の家族のように思える」
リンクは、そう言ったが自信がないのは言うまでもなかった。
そこで、子供がいる2人に水を向けたのだった。
「私の所は、息子2人ですからねぇ……」
ヴェルスがそう言って、結論を出さずにいた。
そして、ラルグの方を見たが、状況は変わらないとみていた。
「私の所も、息子ですから……。
それに、まだ7歳ですので……。
伯爵家のご令嬢とは比べられません」
ラルグもやはり、結論は出せなかった。
ラルグから見たフランデブルグ家はこうだった。
神経質な父親、ニコニコしている母親、そして、まだ未成年なのにしっかりした娘。
演技でしているとなると、凄いなという感想である。
と言う事は、ほぼほぼ結論は出ている。
だが、やはり、迂闊には口には出来ないものである。
スパイや工作員は、非常に巧妙であるからだ。
「いっその事、殿下にご判断なさって貰うのはどうでしょうか?」
ヴェルスは、この雰囲気に堪らず、そう口にした。
ヴェルス自身は、そう思ってはいないが、やはり、ここは、怠けさせずに働かせるべきだろう。
とは言え、エリオにしてみても判断する情報不足である。
預けたとしても、状況が打開できるとは思えなかった。
「最終的なご判断は、確かに殿下がなさるだろう。
だが、疑いが晴れていない以上、彼らを王都に移す訳にはいかない」
リンクは、魅力的な意見に靡きたかったが、流石に思い止まった。
この辺は、サリオの代から重用されるだけある。
「そうですな……」
ヴェルスは、溜息交じりにそう同意した。
「と言う事は、このまま静観するという事ですか?」
ラルグは、2人のやり取りを見て、そう尋ねてきた。
「そうなるな……」
リンクは、確認するかのようにヴェルスを見た。
「……」
ヴェルスは、ハッとした表情で頷いた。
ある意味、ラルグの質問がこの場を救ったのかも知れない。
そう、結局は、待つしかないのである。
慣れない諜報分析の仕事に翻弄されていたが、結局は、今、待つしかない事が分かったのだった。
「フランデブルグ一家は、今どうしている?」
リンクは、少し気が楽になってきていた。
「与えられた部屋で過ごしています。
時折、中庭には出ていますが……」
ラルグは、フランデブルグ家の様子を伝えた。
「幕僚2人は?」
リンクは、更に質問を重ねた。
「同じく、与えられた部屋で過ごしています。
外に出る時は、2人は別ですし、一家とも別にしております」
ラルグは、サズーとイーグについての様子も伝えた。
「怪しげな動きは、ないのか?」
リンクは一応聞いた。
あったら、とっくに、ラルグは流石に申告してきているだろう。
「はい、ないようです」
ラルグは、あっさりとそう答えた。
「と言う事は……」
リンクは、確認する為にヴェルスを見た。
「はい、閣下。
この件に関しては、現在の所、静観で大丈夫だと思われます」
ヴェルスは、そうアドバイスをした。
リンクはその言葉を聞いて安心した。
と同時に、それを悟るまで無駄な時間を過ごしたとも思っていたのだった。




