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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第4巻  作者: 妄子《もうす》
40.第4次アラリオン海海戦

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その5

「ハイネル伯だけを考えるならば、それ程心配しなくていいのかも知れない。

 だが、大公の意向が大きく作用する事は考えに入れないといけない」

 エリオは、マイルスターに大公の危険性にようやく気が付いたかといった感じで言葉を進めた。


 そして、

「今回、大公はどういう理由でこういう命令を出したかだな……」

と言って、今度はエリオが考え込むように、腕組みをした。


 ……。


 エリオとマイルスターが同じポーズを取ったので、沈黙が流れてしまった。


 そして、2人は、同じポーズを取っていないシャルスの方へと自然と視線が向いた。


「流石にそこまでの詳しい情報は入ってきていません」

 シャルスは、副官らしい極めて事務的な口調でそう言った。


 シャルスにしてみれば、聞かれる前にそんな事を聞かれても無駄ですよと言った感じでの対応だった。


 そう言われて、エリオとマイルスターは、同時にシャルスから視線を外した。


 そして、偶然に、顔を見合わせた。


 お互い、そうだよなと言った表情だった。


 とは言え、重要な判断要素だと考えているエリオは、再び考え込もうとした。


「殿下、陣容が決まったなら、早速手続きに入るべきでは?」

 シャルスは、あっけらかんとして言い放った。


 流石である。


「……」

「……」

 エリオとマイルスターは、当然絶句したのは言うまでもなかった。


 戦いを想定する事を必要な事である。


 色々と考える必要があるのは確かである。


 だが、どれ程備えようとしても無理な面があるも確かな事である。


 今が、それに当たるとシャルスは、言い放ったのであった。


 絶句はしたものの、言われてみて、冷静に判断出来ない2人ではなかった。


 アラリオン海にやって来る敵艦隊に対しての十分な布陣は整えた。


 これ以上は、バランスを崩す事になるので出来ない。


 となると、後は現場で対応する他ない。


 要するに、エリオの負担が増えるのであった。


 3人の間で、そうコンセンサスが取れた場面でもあった。


 シャルスはいつも通りの表情、マイルスターは和やかな表情になっていた。


 エリオは、苦々しい表情のままだったのは言うまでもなかった。


(結局、いつも貧乏くじを引くのは、俺か……)

 エリオは、運命を呪っていた。


 お気楽そうに命令を待っている2人を前にして、更に2人に呪いを掛けたい気持ちになっていた。


 だが、悲しい事に、そんな事をしても意味がない事は、エリオにはよく分かっていた。


 いや、もし呪いが掛かってしまったら、エリオが2人の分の仕事もしなくてはならなくなる。


 そう考えると、大きな溜息が出るのであった。


 流石に、稀代の策略家だけあり、状況をよく分かっていた。


「シャルス、各艦隊に伝達してくれ。

 西方艦隊は、バルディオン第2艦隊の追尾。

 総旗艦艦隊は新造艦隊を正式に編入し、アラリオン海に向かう。

 中央艦隊も旗艦艦隊に同行し、予備兵力として同海域で待機。

 東方第1艦隊は、出撃し、王都と海戦海域の中央付近で警戒態勢。

 北方艦隊と東方第2艦隊は、警戒態勢のまま待機し、状況の変化に備えよ。

 以上が、各艦隊への命令である」

 エリオは、総司令官らしく、次々と命令を下した。


「了解しました」

 シャルスは姿勢を正して敬礼をすると、部屋を飛び出していった。


「マイルスター、ライヒ子爵以外に、臨時の御前会議の開催を打診してくれ」

 エリオは、残ったマイルスターにそう命令した。


「了解しました」

 マイルスターも姿勢を正して敬礼すると、部屋を飛び出していった。


「さて、俺は……、議題の資料作りだな……」

 2人を見送ったエリオは、力なく自分の席に着くのであった。


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