その4
「……」
エリオは、マイルスターの質問にまたしても沈黙してしまった。
(この反応は……)
マイルスターは、話が進まない事に戸惑っていた。
だが、それはエリオが何も考えていない訳ではない事はこれまでの経験で分かっていた。
つまり、迎撃の骨子は既に思い描いているのだ。
ならば、それを口にしない理由とは……。
あっ、まあ、その通りです。
お察しの通りです。
マイルスターは、呆れながらもエリオの言葉を待っていた。
だが、無駄だと判断した。
即断即決の場面では、躊躇ないのだが、時間があるとこうなる……。
ならば、総参謀長として、エリオを追い詰める他なかった。
「新造艦隊を含めた旗艦艦隊で、帝国北方艦隊を迎撃。
西方艦隊は、バルディオン第2艦隊を追尾。
中央艦隊は、予備兵力として待機。
こんな感じでよろしいでしょうか?」
マイルスターは、エリオが考えている迎撃態勢を次々と述べた。
エリオは当然苦々しい表情になっていた。
「帝国北方艦隊がどのようなスタンスで来るのかが問題だな……。
それと、新造艦隊のレベルが報告通りかもな」
エリオは、ボソッとそう言った。
これらを勘案すると、行き着く先はやっぱり面倒臭い事になるという事である。
「ならば、中央艦隊も最初から参戦させ、数的有利な場面を作りますか?」
マイルスターは、エリオのサボりを許さないといった感じだった。
「いや、それだと、余計面倒になる……」
エリオは、思わず本音を漏らしてしまった。
「と言うと?」
マイルスターは、エリオの言葉に対しては責める事はしなかった。
話が進まなくなるからだ。
「北方艦隊のやる気が高く、新造艦隊の練度が低かったら、艦隊が混乱する。
それに中央艦隊が巻き込まれたら、ややこしい事になる。
それだったら、予備兵力として、戦況に応じて投入すべきだろう」
エリオは、すらすらとマイルスターの質問に答えた。
(やっぱり、あらゆる想定まで、出来てるじゃないですか!)
マイルスターは、何度目かの呆れ果てた感情を持った。
だが、有能な総参謀長はそれをおくびにも出さなかった。
やっぱり、話が進まなくなるからだ。
「成る程、そうなると、お互い、自分の艦隊が戦力になるかどうかを確かめるだけに留まる事を祈るしかないようですな」
マイルスターは、和やかにそう言った。
顔は和やかだが、面倒事になった場合は、きちんと面倒を見てくれという事であった。
それを察したエリオは、更に苦々しい表情になった。
とは言え、マイルスターの方は、反対に晴れ晴れとしていた。
エリオは総司令官として、方針を示したからだ。
後は、命令を出して、準備をするだけだった。
「それにしても、大公はこの時期に何故動き出したのだろうか?」
エリオは、今まで感じていた疑問を口にした。
マイルスターは、あからさまにエリオが未練がましいと感じた。
当然、サボりたいのかという疑念が湧いてきた。
とは言え、放っておく訳にも行かない。
とんでもない事を指摘している場合が多々あるからだ。
「殿下は、フレックスシス大公の事をかなり買っているようですな」
マイルスターは、一応エリオの話に合わせる事にした。
「マグロットを一度手放しておいて、敵に打撃を与えた上で、奪還。
それに、我が国でも、ホルディム伯を焚き付けて反乱を起こさせた。
その手腕には疑いがないではないか!」
エリオは、マイルスターの言葉に驚いていた。
「うーん……」
マイルスターは、エリオの言葉に疑問を持っていた。
(マグロットの件はさておき、我が国へのちょっかいは完全に失敗したのでは……?)
マイルスターは、腕組みをしていた。
だが、直ぐにその考えが変だと感じた。
(いや、そうではないか。
殿下が先手を打ったから、あんな中途半端な反乱になったのだ。
大公に時間を与えていたら、確かにどうなった事やら……)
マイルスターは、腕組みをし直しながら、考え直していた。




