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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第4巻  作者: 妄子《もうす》
41.亡命騒ぎ

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その11

 ……。


 イチの最後の言葉が、余韻として残った為か、3人の間にしばらく沈黙が流れた。


 いつものような間の抜けた沈黙ではなかったのが、事態を悪化させているように思われた。


「でも、まあ、ここに来ても意味がなかったな」

 エリオは、気を取り直すようにそう言った。


 現状、連盟に対して何かが出来る訳ではなかった。


 軍事行動は非現実的であり、謀略はクライセン家の得意とするものではなかった。


 第一、仕掛けるにしても準備に膨大な労力が必要である。


 そう考えると、合理主義の権化のエリオとしては、この件に感ける事は、これ以上良しとはしなかったのだろう。


「……」

「……」

 マイルスターとシャルスは、無言でエリオを見た。


 エリオの言葉自体は、その通りだが、それを額面通り受け取る気はなかった。


 結果としては、そうなのだが、こういう機密事項である。


 しっかりとした手順で確認を行わなくてはならないからだ。


 それを一番分かっているのはエリオだからである。


 この言葉は、どちらかと言うと、元伯の亡命問題に集中しようという事であろうと感じていた。


「ま、色々あるけど、まずは、フランデブルグ伯の件だな……」

 エリオは、2人が予想したとおりの言葉を継ぎに口にした。


「亡命となると、殿下は拒否なさるのでしょうか?」

 マイルスターは、率直に尋ねた。


「リーランに完全に忠誠を尽くすかだな。

 そうするなら、受け入れていいと思う」

 エリオは、条件付きでそう答えた。


「確かにそうですな」

とマイルスターは納得してから、

「それに、これだけ見事な亡命劇。

 裏があると、警戒なさった方がいいですね」

と警戒心を露わにした。


「まあな……」

 エリオも、裏に何かあるのではないかと考えているようだ。


 珍しく、シリアスな展開になる中、シャルスだけは首を傾げていた。


 シャルスは、確信がないので、口には出さないでいた。


 とは言え、稀代の才能の持ち主が、色々とやらかしているのをずっと見てきている人物である。


 なので、今回も色々と考えすぎではないかと思ってしまう所は、やはり、シャルスなのだろう。


 そして、そう思っているが、ここは敢えて口に出さないのもシャルスである。


 何も面白センサーが反応している訳ではないのではないのやも知れない。


「まずは、フランデブルグ伯のご家族からの調査ですな。

 伯本人と、幕僚2人は、子爵閣下が確認しています。

 妻と娘が、本人と確認されれば、問題はほぼ解決出来ると思われます」

 シャルスは、とりあえず、副官としての役割を果たす事に専念した。


「うん、あ、そうだね」

 エリオは、シャルスの意見を聞いて尤もだと思った。


 話を難しく考えすぎている事に気が付いたようだ。


「確かに」

 マイルスターの方は、唸るように頷いた。


 こちらも最も確かめなくてはならない事から、やるべきだと思ったのだろう。


 確かに、家族が本物であれば、スパイや工作員として送り込まれた可能性はぐんと低くなる。


 とは言え、そんな事、既にリンクが取り掛かっている事も想像が付く話である。


 となると、今は、続報を待つしかないと言う事である。


 それに気が付いたエリオとマイルスターは、やれやれといつも通りになるのだった。


「それにしても、今日は吉報で終わるはずだったのが、とんだ事になってしまったな」

 エリオは、ぼやくのを忘れなかった。


「全くです」

 いつもなら呆れるマイルスターも自分の事に懸かっているので、珍しく同意した。


「いえ、お二人共、吉報は吉報であり、何があったもそれ自体は損なわれる事はないでしょうに」

 シャルスは、真面目な顔をして、2人の言う事を否定した。


 エリオとマイルスターは、珍しく顔を見合わせる他なかった。


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