その11
……。
イチの最後の言葉が、余韻として残った為か、3人の間にしばらく沈黙が流れた。
いつものような間の抜けた沈黙ではなかったのが、事態を悪化させているように思われた。
「でも、まあ、ここに来ても意味がなかったな」
エリオは、気を取り直すようにそう言った。
現状、連盟に対して何かが出来る訳ではなかった。
軍事行動は非現実的であり、謀略はクライセン家の得意とするものではなかった。
第一、仕掛けるにしても準備に膨大な労力が必要である。
そう考えると、合理主義の権化のエリオとしては、この件に感ける事は、これ以上良しとはしなかったのだろう。
「……」
「……」
マイルスターとシャルスは、無言でエリオを見た。
エリオの言葉自体は、その通りだが、それを額面通り受け取る気はなかった。
結果としては、そうなのだが、こういう機密事項である。
しっかりとした手順で確認を行わなくてはならないからだ。
それを一番分かっているのはエリオだからである。
この言葉は、どちらかと言うと、元伯の亡命問題に集中しようという事であろうと感じていた。
「ま、色々あるけど、まずは、フランデブルグ伯の件だな……」
エリオは、2人が予想したとおりの言葉を継ぎに口にした。
「亡命となると、殿下は拒否なさるのでしょうか?」
マイルスターは、率直に尋ねた。
「リーランに完全に忠誠を尽くすかだな。
そうするなら、受け入れていいと思う」
エリオは、条件付きでそう答えた。
「確かにそうですな」
とマイルスターは納得してから、
「それに、これだけ見事な亡命劇。
裏があると、警戒なさった方がいいですね」
と警戒心を露わにした。
「まあな……」
エリオも、裏に何かあるのではないかと考えているようだ。
珍しく、シリアスな展開になる中、シャルスだけは首を傾げていた。
シャルスは、確信がないので、口には出さないでいた。
とは言え、稀代の才能の持ち主が、色々とやらかしているのをずっと見てきている人物である。
なので、今回も色々と考えすぎではないかと思ってしまう所は、やはり、シャルスなのだろう。
そして、そう思っているが、ここは敢えて口に出さないのもシャルスである。
何も面白センサーが反応している訳ではないのではないのやも知れない。
「まずは、フランデブルグ伯のご家族からの調査ですな。
伯本人と、幕僚2人は、子爵閣下が確認しています。
妻と娘が、本人と確認されれば、問題はほぼ解決出来ると思われます」
シャルスは、とりあえず、副官としての役割を果たす事に専念した。
「うん、あ、そうだね」
エリオは、シャルスの意見を聞いて尤もだと思った。
話を難しく考えすぎている事に気が付いたようだ。
「確かに」
マイルスターの方は、唸るように頷いた。
こちらも最も確かめなくてはならない事から、やるべきだと思ったのだろう。
確かに、家族が本物であれば、スパイや工作員として送り込まれた可能性はぐんと低くなる。
とは言え、そんな事、既にリンクが取り掛かっている事も想像が付く話である。
となると、今は、続報を待つしかないと言う事である。
それに気が付いたエリオとマイルスターは、やれやれといつも通りになるのだった。
「それにしても、今日は吉報で終わるはずだったのが、とんだ事になってしまったな」
エリオは、ぼやくのを忘れなかった。
「全くです」
いつもなら呆れるマイルスターも自分の事に懸かっているので、珍しく同意した。
「いえ、お二人共、吉報は吉報であり、何があったもそれ自体は損なわれる事はないでしょうに」
シャルスは、真面目な顔をして、2人の言う事を否定した。
エリオとマイルスターは、珍しく顔を見合わせる他なかった。




