その7
「続報が次々と来るだろうが、こちらも動かないとな」
エリオは、やれやれと言った表情になった。
こういう場合は、颯爽となるのがカッコいい総司令官の必須条件ですよねぇ……。
「何をなさるんですか?」
クルスは、エリオのやろうとしている事に、興味津々だった。
「先ずは、全軍、警戒態勢ですな。
これが、テロの引き金や、内乱の誘発に使われないと限らないので」
エリオは、溜息交じりにそう言った。
可能性は低いと見ているが、全くない訳ではない。
そして、備えなかった場合の被害は甚大になるので、無駄だとしても動かないとならなかった。
「全軍ですか?」
クルスも偉い事になったと感じていた。
「陸軍の方の、即応できる戦力はどれくらいですか?」
エリオは、クルスに尋ねた。
「第1軍、第3軍は、全体の1/4。
第2軍は、全体の1/8です」
クルスは、陸軍副司令官らしく、即答した。
「うちと同じですな……」
エリオは、そう呟いた。
「どうなさいますか?
全兵力を招集しますか?」
クルスは、指示を仰いだ。
「いえ。
その人数で、対応して貰いましょう」
エリオは、そう決断した。
そして、紙とペンを取り出し、書類を書き始めた。
いつものっぺりとしているエリオだが、こういう動作はもの凄く速い。
書類を書き終え、自分の花押を沿えると、立ち上がった。
「陸軍中将ミモクラ侯爵、貴官に要請する。
この親書を、陸軍総司令官ロジオール公に渡し、可及的速やかな行動をお願いする」
エリオは、そう言うとクルスにロジオール公宛ての新書を手渡した。
親書と言っても、実質は命令書である。
クルスは、畏まってそれを受け取った。
この辺は、単なる儀式である。
「承りました」
クルスはそう言うと、敬礼した。
エリオは答礼し、それを解除すると、クルスも敬礼を解いた。
「では、失礼致します」
クルスは、回れ右をすると、部屋を出て行った。
その後を、エリオとマイルスター、シャルスが追った。
クルスは、自分への見送りだと思ったが、3人はそのまま部屋を出たので、違う事に気が付いた。
「殿下はどうなさるのですか?」
クルスは、自分とは逆方向に行こうとしているエリオに尋ねた。
「続報はこの後、来るのですが、自分からも情報収集します」
エリオは、そう言うと、別の方へと向かおうとしていた。
「成る程……」
クルスは、流石だと思いながらも、シャルスだけが自分と同じ方向に向かおうとしている事に気が付いた。
「何なら、陛下への報告も私がしますが、如何なさいますか?」
クルスは、意外と気の利く一面を見せた。
「分かりました。
お願いします」
エリオは、素直にクルスの申し出を受けた。
情報収集するには、シャルスが必要であり、合流が遅れるよりは、一緒に行った方が仕事が捗るからである。
「了解しました。
では!」
クルスは、そう言うと踵を返して、自分の任務を果たしに行った。
エリオ達3人は、軍港へと向かった。
そこに、クライセン家の情報収集を取り扱う総本部があったからだった。




