その38
ドッカーン!
ドッカーン!
互いに撤退する予定なのに、砲撃の応酬は収まる気配がなかった。
まあ、撤退するのは決まっていても、砲撃を緩めた瞬間、敵が襲い掛かってくるのは明白であるからだ。
なので、互いに手を抜く訳にはいかないし、隙探しにも余念がなかった。
戦いが如何にアホらしい事なのが、よく分かる事象であった。
そんな中、フィルタはサラサから砲撃中止命令を受け、それを指示していた。
(大丈夫なのかな?)
フィルタは、不安に思いながらも命令を実行させるべく動いた。
そして、サラサ艦隊の砲撃が一斉に止んだ。
と同時に、クライセン各艦隊からの砲撃も止んだのだった。
「!!!」
フィルタはその光景を見て、何とも言えない気持ち悪さを感じたのは言うまでもなかった。
ただ、その感じは戦慄ではない事だけは確かだった。
「全艦、進路そのまま。
現海域から離脱する」
サラサは、命令を徹底させるべく、そう命令を下した。
それに、フィルタが従った。
「どうやら、終わったようですな」
バンデリックは、安全を確認してからそう言った。
「……」
サラサは、それには応えずにふくれっ面をしていた。
それを目撃したフィルタは困惑していた。
戦いが終わった後のサラサは、意外にもサバサバしていた。
これまでは……。
だが、今回は、違っており、明らかに遺恨が残っている感が否めない。
まあ、もっと言ってしまえば、エリオ艦隊とぶつかる前から、そんな感じだった。
いや、寧ろ、現在、遺恨が更に増しているような感じになっていたのだった。
「敵は、何故挟撃戦ではなく、半包囲網に変更したのでしょうか?」
バンデリックは、構わず尋ねた。
「戦いが長引く事を嫌ったからでしょ」
サラサは、ぶっ切り棒だが、そう答えた。
指揮官としては、参謀長の言う事をいつまでも無視している訳には行かないと思ったのだろう。
その辺は成長しているなと、バンデリックが思った事は言うまでもない。
なので、ここは敢えて、言葉を繋がなかった。
「敵は、こちらを誘導し、決戦するか撤退するかの選択を迫ってきた……」
サラサは、促されるままそう言った。
だが、最後の言葉は飲み込んだのである。
(してやられたって事?)
フィルタは、驚いていた。
「ま、サラサやクライセン公からしたら、そう言う事になるのだけど、あの場で撤退するには、迅速な艦隊行動が必要だよね。
その点では、もう少し我が艦隊を褒めていいのでは?」
バンデリックは、サラサの言葉に対して、そう返してきた。
まあ、エリオとサラサの考えではそうだが、実際の所はバンデリックの指摘の通りである。
並の艦隊では、半包囲網に取り込まれて、大変な目にあっていたのは言うまでもない。
「そうね……」
サラサは、しかめっ面を止めた。
バンデリックの言う事に理があると認めたのだろう。
この辺は、2人の関係が変わった賜だろう。
「まあ、無事……、ではないか、7発も貰ったしね……」
サラサは、被弾した艦の数を考えると、曇った。
「こちらも7発やり返したので、まあ、おあいこという事で」
バンデリックは、一応戦果を言った。
「そうね、そう言う事にしておきましょう」
サラサは、そう言うと気分を立て直した。
そして、
「全艦、進路はこのまま。
敵と十分に離れたら、ワタトラに帰還するわよ!」
と命令を下した。
うぉぉ!!
サラサの命令に、水兵達は歓喜で応えた。
(それにしても、クライセン公は、閣下に匹敵するだけの敵なんだな……)
フィルタは、今回の戦いの次元の高さに驚いていた。
こうして、第4次アラリオン海戦は終結した。
ただ、この迷将達、単に本気で殴り合うだけでは、勝負が付かないことが明白になった戦いであった……。




