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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第4巻  作者: 妄子《もうす》
40.第4次アラリオン海海戦

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その37

「ワタトラ艦隊、我が艦隊との合流する見込みです」

 ロデックがそう報告した。


「そうか……」

と言って、ハイネル伯は、考え込むような仕草をした後、

「それにしても、ワタトラ伯は流石なだ。

 あんな狂気じみた相手にも臆する所がない!」

と感心したように言った。


 そのあまりにも無邪気っぷりに、クラーが唖然としていた。


 どう対応していいか分からないからである。


 慣れているロデックは、放って置いているので、何もしなくていいとは思うが……。


「ん?それにしても、敵中央艦隊からの圧力が強まっていないか?」

 ハイネル伯はそう言った。


 忘れていはいけないが、ハイネル艦隊はリーラン中央艦隊と交戦中である。


 おちゃらけているようで、ハイネル伯はきちんと状況を掴んでいた。


 喰えないチャラ男である。


「敵は、恐らく包囲網を絞るのでしょう」

 クラーは少し安心し、状況の説明を行った。


「と言う事は、敵の全面攻勢の前触れ?」

 ハイネル伯は、クラーの説明で得心がいったようだった。


 そして、自分達が半包囲網の中に入りつつあるのをきちんと認識したのだった。


「仰る通りです」

 クラーは、ハイネル伯の状況把握能力を高く評価した。


「ワタトラ伯より伝令。

 『合流し、撤退』との事です」

 ロデックが、次の報告をしてきた。


「流石だな……」

 ハイネル伯は、絶好のタイミングでの伝令に感心していた。


 でも、何故か、チャラさが隠せないのは気のせいだろうか……?


「我が艦隊も撤退準備。

 ワタトラ艦隊に合わせて、撤退するぞ!」

 ハイネル伯は、何故か生き生きと命令を下した。


 この辺が、チャラさを隠せない所以なのだろう。


 それに反比例するかのように、ロデックは直立不動で敬礼すると、直ちに命令を実行に移していた。


 こちらは、今、どれだけ緊張しなくてはならない場面かを把握していたからだ。


「しかし、『漆黒の闇』と呼ばれる漢が、簡単に逃してくれるのかな?」

 ハイネル伯は、核心を突いたように言った。


「恐らくは大丈夫だと思われます」

 クラーは、意外にもそう確信していた。


「どういう事だ?」

 ハイネル伯は、狐につままれたような表情になった。


「恐らく、クライセン公の誘導でこうなったと思われます。

 勿論、ワタトラ伯もそれに乗っかったので、スムーズに行くでしょう」

 クラーは、ハイネル伯に現在の状況を説明した。


「えっ、まじ……」

 ハイネル伯は、驚きを隠せなかった。


 あんな激しい戦いをしておいて、プロレスだったって、信じられなかったからだ。


 とは言え、『漆黒の闇』と『銀の魔女』。


 互いの手の内を読み合い、妥協したと言われても納得する話でもある。


「それにしても凄えな……」

 ハイネル伯は、チャラさが完全に消えて、ただただ感心していた。


 キャラ変か?


 だが、と同時に戦いの終わりが見えたので、安心した。


 まだ、抜け切れないか?


「閣下、気を緩めてはなりません。

 隙を見せたら最後、そこに付け込まれますぞ!」

 クラーは、安心したハイネル伯に警告した。


「!!!」

 ハイネル伯は、クラーが只の脅しをしている訳ではない事を瞬時に悟った。


 本当に状況を把握する能力に長けている。


「今後の予定は決まっていますが、そこから少しでも踏み外せば、奈落の底に突き落とされます」

 クラーは、更に警告を加えた。


 そして、それは経験者の苦い経験談でもある。


 そう言う事なので、それはかなり重い言葉である。


「了解した」

 ハイネル伯は、チャラ男に似合わない真剣な表情になった。


 そして、

「全艦、安全圏まで撤退するまで、決して気を緩めるな。

 砲撃は続行。

 敵の接近を絶対に許すな!」

と気合いの入った命令を下した。


 とは言え、2人の迷将に付いて行けるハイネル伯は、かなり優秀な指揮官と言えるのではないだろうか?


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