その33
バッシャン、バッシャン!!
第2射は当然、より近い場所に落ちていた。
グラグラ、ゆらゆら……。
各艦は、更に大きく揺さぶられていた。
そんな中、エリオは、敵の第2射の前に書いていた紙をシャルスに渡した。
紙に書いていた時に、マイルスターは横からそれを見ていた。
(また、そんな細かい指示を……)
マイルスターは、いつもながら和やかに呆れていた。
紙を受け取った方のシャルスは、一瞬、眉をひそめたが、すぐに伝令係に指示を飛ばした。
指示の飛ばし方次第では、エリオの作戦に影響が出ることを意識してのことだった。
「西方艦隊、中央艦隊、きちんと動きますかね?」
マイルスターは、そう尋ねた。
だが、いつも通り全く心配していなかった。
「ん?大丈夫だろう」
エリオは、軽い気持ちでそう応えた。
こちらも、全く心配していなかった。
(まあ、それよりもだ……)
マイルスターは、他の2艦隊より自分達の艦隊を心配していた。
「全艦、前進せよ!」
エリオは、サラサ艦隊が一瞬躊躇したことに付け込むように、いきなり命令を下していた。
「敵、西方艦隊は?」
サラサは、第2射後、そう聞いた。
「西方艦隊、立った今、進路を変更。
北東方向に向かっています」
フィルタが、ちょうど張った報告を読み上げた。
サラサのタイミングに驚かされたのは言うまでもない。
ただ、後方から迫って、挟撃を狙っている艦隊である。
指揮官としては、位置を確認するのは当たり前であり、そろそろヤバい位置に来ていると感じていたのだろう。
だが、流石のサラサも驚愕せざるを得なかった。
(まさか?)
サラサは、危機感を感じてはいたものの、それを口には出さなかった。
だが、その危機感は杞憂に終わる訳がなかった。
「敵総旗艦艦隊、前進してきます!」
報告は、フィルタからではなく、マストの上からだった。
それは、正に急報と呼べるものだった。
「あいつ!」
サラサは、予感が当たったので、今度は叫ばずにはいられなかった。
サラサが一瞬止まったのは、これを予期していた為でもあった。
「これって、まさか……」
バンデリックの方も薄々察していた。
「そう、全面対決のお誘いよ!」
サラサは、ニヤリと不適な笑みを浮かべた。
この期に及んで、この表情とは、少々救い難い。
とは言え、『銀髪の魔女』の2つ名にはふさわしいかもしれない。
2人の迷将は、こうして直接対決となると、どうしても思わぬ方向へと行ってしまうようだ。




