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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第4巻  作者: 妄子《もうす》
40.第4次アラリオン海海戦

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32/48

その32

「う~ん、足が止まらないねぇ……」

 総司令官が、他人事のように呟いた。


 いや、その言葉、全員に聞こえてるんですけど!


(やれやれ、どうして、こう、人を煽らないと気が済まないのですかねぇ、この御方は……)

 マイルスターは、和やかな表情で事の推移を見守る事にした。


 エリオのこの言葉に、水兵達は声も上げずにいきり立っていたのは、言うまでもない。


 ま、いつもの事か……。


 ただ、エリオはただこの状況を口にしただけであり、砲弾が当たらないのは、水兵達のせいにしている訳ではなかった。


 水兵達は、当然、自分達の腕が悪くて当たらないと解釈していた。


 つまり、やるか、やられるかの状況なのである。


「間もなく、敵艦隊の有効射程に入ります」

 一触即発の雰囲気の中、シャルスの報告が響き渡った。


 これは、こちらの方も全艦が有効射程に入る距離になるという事でもある。


「……」

 意外な事に、エリオは、シャルスの報告に全く無反応だった。


(あれあれ?)

 マイルスターは驚くと共に、和やかに固まった。


 ま、固まっているのはエリオも同じなのだが……。


 でも、まあ、水兵達は固まる事なく、自分の仕事をこなすべく動き回っていた。


 なので、問題がないのだろう、たぶん……。




「敵艦隊、有効射程内に入りました」

 フィルタが、そう報告した。


「よし、砲撃開始!」

 サラサは、躊躇なく命令を下した。


 ドッカーン!


 鬱憤を晴らすかのように、全艦の砲門が火を噴いた。


 砲弾は放物線を描いて、エリオ艦隊へと向かって行った。


 漸く、自分達が砲撃出来る位置までやって来たので、サラサはこれからだという思いがあった。




「敵艦隊、発砲」

 シャルスは、冷静にそう報告した。


 エリオが命令を出さなかったからと言って、敵は待ってくれないと言わんばかりだった。


 バッシャン、バッシャン!!


 報告から間髪空けずに、海面に砲弾が降り注いだ。


 サラサ艦隊からの砲撃である。


 それだけでは済まないとばかりに、エリオ艦隊を揺さぶった。


 一部は至近弾として、着弾していたからだ。


 それを見たエリオは、何の反応を見せなかった。


 流石の総司令官!


 こんな事では、動揺しないと、誰もが思っていなかった。


 そう、また、碌でもない事を考えている、いや、前から考えていたなとばかりの痛い視線がエリオを貫いていた。


 ただ、エリオが全く動じていないので、水兵達も負けじと動じないようにしていた。


 これは、真剣勝負なのである。


 ただ、戦う相手を間違えているに過ぎないのであった。




「第2射、砲撃準備完了!」

 フィルタの方は、意気揚々と報告した。


 当然である、


 これまで一方的に撃たれまくっていた状況が一転し、撃ち合いに突入するのだ。


 気合いが入らない訳がない。


 況してや、最悪の敵と称されるエリオ艦隊である。


 否応にも、気分が盛り上がってくる。


 それは、サラサも同じだと考えていた。


「……」

 当のサラサは、エリオ艦隊の反応の鈍さに戸惑っていた。


 不思議なものである。


 迷将というのは、こういう妙な行動に、敏感に反応してしまうのだった。


 とは言え、エリオ艦隊からの砲撃がない訳ではない。


 だが、予想していたものとは違っており、4艦からの砲撃のみであった。


(おかしい……)

 サラサは、罠の存在を気にする他なくなっていた。


「サラサ、チャンスですよ」

 バンデリックは、サラサに対してそうアドバイスした。


 敵の思惑は気になるものの、ここで砲撃しない手はない。


「砲撃!」

 サラサは、バンデリックの言いたいことをすぐに察し、攻撃命令を出した。


 ドッカーン!


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