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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第4巻  作者: 妄子《もうす》
40.第4次アラリオン海海戦

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31/49

その31

「ハイネル艦隊が動き出しました。

 敵、中央艦隊がそれを阻止する動きに出ています」

 フィルタが、そう報告した。


「……」

 サラサは、その報告に対しては反応しなかった。


 まあ、こっちはこっちで、忙しいのである。


 エリオ艦隊からの正確な砲撃により、中々前に進めない。


 しかし、被弾している訳でもない。


 サラサの的確な指示により、当たる前に回避出来ている。


 エリオが撃って、サラサが避ける。


 何か、プロレスかサーカスのような感じになっていた。


 傍から見ると、そう感じる程、お互いの意図がよく分かっているのだった。


 そうなると、埒が明かないと言いたい所だが、そうではなかった。


 戦況は刻一刻と変化していた。


 サラサ艦隊が、砲撃の合間を縫いながら、エリオ艦隊に確実に接近していたからだ。


(閣下は、今は忙しい……。

 他の戦場に構っている暇はないな……)

 フィルタは、サラサの反応がないのに対してそう思った。


 これは、ある意味間違いではないが、正しくはなかった。


 予想通りの報告を受けたので、反応しなかっただけだった。


 また、余裕のないのは事実なので、困っていない戦線の事はそちらでやって貰おうと考えていたのだった。


 単純そうに見えるサラサも、意外と複雑な状況をこなしているのである。


(思った以上なんだな、クライセン公って人は!

 近付くだけでこんなに大変とは!)

 フィルタは、真の敵を今、正に認識した気になっていた。


 まあ、エリオ艦隊に近付くだけならば、何もこのような方法を取る必要はない。


 ハイゼル侯やワルデスク侯のように、直線的に突っ込めばいいだけである。


 ただ、それをやってしまうと損害が……。


 戦いがこれで終わりではないという認識があるサラサは、当然そのような策は採らない。


 って、この海戦で、雌雄が決しない事がばれてしまった?


 物語的には、ヤバくない?


 うん、今のことはなかった事にしよう……。


 まあ、それはそれとして、サラサ艦隊は回避しながら、何とかエリオ艦隊に近付こうとしていた。


(それにしても、我慢強くなったものだ……)

 今度は、バンデリックの心の中の声である。


 ここまで、接近を阻止されているのだ。


 悪態を吐いてもいい頃である。


 まあ、サラサの場合、悪態というか、駄々っ子のように見えなくはないのだが……。


 とは言え、今回はそうしないという事は、バンデリックの思っているとおり成長したからだろう。


 色々な経験を重ね、母親にもなった。


 それが、彼女を成長させたのだろう。


 とは言え、表情までは隠せていないようだ。


 憤懣遣る方ないといった表情をしていた。


 というより、激おこぷんぷん丸という表現の方が近いだろう。


(それにしても、向こうもこちらを研究してきているのだろうな……)

 バンデリックは、サラサをいじるのを止めて、エリオ艦隊の方に目を向けた。


 サキュス沖海戦では、もっと容易に近付けた。


 だが、今回は、こちらの突撃を抑えに掛かる砲撃をしてきている。


 それが、実に嫌らしい。


 被害こそほぼ無いが、サラサ艦隊が追い詰められているのは明らかだった。


(そう言えば、サキュス沖海戦も西方艦隊が参加していたな……)

 バンデリックは、背後から迫るリンク艦隊を気にしない訳には行かなかった。


 足止めをされている以上、リンク艦隊との距離は縮まってきている。


 なので、挟撃の危険性は高まっているのである。


(さて、サラサはどう切り抜けるのか……)

 バンデリックは、サラサに視線を戻しながらそう思った。


 サラサの方は、バンデリックやフィルタの思惑を知ってか知らずか、エリオ艦隊への接近を試みる為の命令を出し続けていた。


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