その28
「敵ワタトラ艦隊を視認」
フィルタとほぼ同時に、シャルスも報告していた。
こうした所を見ると、索敵能力は互角か?
まあ、接近してることがお互い分かってますからね。
そうとも言えないか……。
「やはり、最短コースを取ってきますかね?」
マイルスターは、現れたサラサ艦隊の行動を予測していた。
エリオ艦隊とサラサ艦隊では、有効射程が違うのはこれまで通りである。
したがって、エリオに先手を取られても、その砲撃を掻い潜って、自分の有効射程まで近付かなくてはならない。
とは言え、有効射程に利があるのは、4隻の中核だけだった。
その為、数的有利なサラサ艦隊をどこまで抑えられるかが、最初の鍵となる戦いになるだろう。
マイルスターは、そこまで考えていたのだった。
伊達に、和やかにしているだけではない総参謀長だった。
「そうだね……」
エリオの方は、いつも通りなのか、気のない返事をしていた。
既に、マイルスターが考えている以上の事を考えている事は、明白だ。
とは言え、陣形を再編したのだ。
まともに撃ち合う気概は、あるようである。
とは言え、新造艦隊を含めたエリオ艦隊は、いつも通り、奇妙な緊張感の中にあった。
敵が接近しているのだから、当然緊張するのは当たり前だ。
だが、いつも通り、水兵達は、エリオにどんな無茶振りをされるのかが、気になるのだった。
「全艦、砲撃準備完了しております」
シャルスは、確認の為の報告をした。
まあ、別に命令を出し忘れているんじゃないかと疑っている訳ではない。
かと言って、命令や指示がない以上、水兵達は先程から妙な緊張感に苛まれているのだ。
それを少しでも緩和してやる必要がある。
只でさえ、エリオと水兵達の間の緊張感は計り知れないものがある。
何も、戦いの中で、そのレベルを上げる必要はないのである。
「予定通り、まず4隻で砲撃を開始。
残り10隻は、砲撃準備のまま待機せよ」
エリオは、シャルスに促されるまま指示を出した。
シャルスは、それに対して敬礼で答えた。
「やはり、砲撃しながら後退はしませんか?」
マイルスターは、確認を入れた。
「10隻を信頼しない訳ではないが、精密すぎる艦隊行動を伴う。
それで、混乱してしまうと元も子もないからな」
エリオは、加わった新造艦に対して、既に評価を下していた。
「了解しました」
マイルスターは、特に異を唱えなかった。
予定の行動だったのだろう。
4隻のみであれば、かなり無茶振りをしても大丈夫という認識はある。
だが、新造艦10隻には、荷が重いだろう。
何せ、エリオが出す命令なのである。
その場、その場でとんでもない命令が下されないという保証は皆無であるからだ。
とは言え、艦隊を全く動かさないという訳ではない。
精緻を越えるような、いや、曲芸みたいな事はさせないという事である。
そうこうしている内に、サラサ艦隊は急速に接近してきていた。
前にも述べているが、サラサ艦隊としては距離を詰めない限りどうしようもないのである。
エリオは、そのサラサ艦隊をジッと見ていた。
嫌でも、戦いの機運が盛り上がってくる場面である。
「西方艦隊と中央艦隊は?」
エリオは、サラサ艦隊と対峙して初めて能動的に質問をした。
報告がない以上、2艦隊は順調に動いている筈である。
「2艦隊からの遅延報告なし。
作戦を順調にこなしていると思われます」
シャルスが、即答した。
「……」
それに対して、エリオは無言で頷いた。
「いよいよですな」
マイルスターは、和やかに盛り上げようとしているようだ。
何せ、エリオには戦いに対しての高揚感というものがなさ過ぎるのである。
「ワタトラ艦隊、有効射程に入ります」
シャルスが、マイルスターの言葉から間を上げずに、そう報告を入れてきた。
「4艦、砲撃開始!」
エリオは、シャルスの報告とほぼ同時に、命令を下したのだった。
ドッカーン!
4隻から放たれた砲弾は1音を伴い、サラサ艦隊目掛けて飛んで行った。
第4次アラリオン海戦でのエリオとサラサの直接対決の始まりであった。




