その27
ま、その不思議里とやらは、物語の本質ではないので、どうでもいいことなのです。
それより、話は盛り上がってきた海戦の続きをするのです。
この流れは大事にしないとです。
「敵総旗艦艦隊を視認!」
フィルタは、力を込めてそう報告した。
それを受けて、艦隊の空気が一気にヒートアップしていった。
その中でも、サラサは別格であった。
サラサは、貴族令嬢なので「ぶっ潰す」みたいな下品な言葉を発することはなかった。
ただ、「潰して差し上げますわ、おほほほ」と言った表情をしていたのは言うまでもなかった。
その傍らで、少々呆れ気味のバンデリックが、冷静に事の成り行きを見守っているのが印象的だった。
数少ないが、一応海戦を経験してきたフィルタである。
その雰囲気になったことに、ただ安心していた。
だが、自分の目でも、エリオ艦隊を視認出来る位置に来た時、ふと首を傾げた。
(何か、妙だ……)
フィルタは、戦いの経験は明らかに少ない。
だが、今までと違う異質なものを感じていた。
敵は、最悪と称される相手である。
ならば、プレッシャーのようなものを感じ取れる筈であった。
まあ、フランデブルグ元伯などは、その人生経験からそう言うものを直ぐさま感じ取ってはいた。
だが、それは、彼の人生経験によるものであり、特殊な条件下のみ発動するものであろう。
と言う事は、通常、そう言ったものを感じない。
敵と対峙した際の熱量すら感じない。
フィルタは、それを不気味だと感じていた。
この感じ方は、悪くはない。
この熱量の無さを侮った瞬間、奈落の底に突き落とされた例は、最近あったからだ。
「フィルタ、あの艦隊ムカつくでしょ?」
サラサは、そう不機嫌そうに同意を求めたが、不適な笑みを浮かべていた。
その傍らで、バンデリックは苦笑いしていた。
「あっ、いえ、その、何とも言えません……」
フィルタは、サラサが求めた同意に必ずしも賛同しなかった。
そして、自分の感情を素直に表現しようとしたが、出来なかった。
と言うか、まあ、言葉の通りなのかもしれない。
「でも、それに乗ってはダメよ」
サラサは、賛同しなかったフィルタに特に何かを言う訳ではなかった。
これは、ある意味褒めているのだろうか?
ま、と言うよりは、フィルタの反応には興味がない?
なので、何やら勝手に話を進めていた。
「???」
フィルタは、当然黙って呆然としている他なかった。
「あれは、人をムカつかせる才能が世界一だからね。
挑発に乗ってはダメよ」
サラサは、フィルタのことは、やっぱり、お構いなしに続けた。
その傍らで、バンデリックが笑いを堪えていた。
もう既に、苦笑いの域は超えていた。
それを見たフィルタは、何となく分かった。
サラサはフィルタに注意をしているのではなく、自分自身に言い聞かせているのだと。
それが分かると、フィルタは一気に緊張した。
(閣下が、それ程まで注意しなくてはならない相手なのか!)
フィルタは、改めて気を引き締めた。
第4次アラリオン海戦での、エリオとサラサの対決は、砲撃前からバチバチであった。
えっ、まあ、サラサだけだって?
まあ、それはそれで、おいておきましょう。




