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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第4巻  作者: 妄子《もうす》
40.第4次アラリオン海海戦

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23/49

その23

「私が、クライセン公の考えを全て推測出来るとは思えません」

 クラーは、自虐的にそう答えた。


 これまでの経験では、負けてばかりだという思いがあったのは言うまでもなかった。


「……」

 ハイネル伯は、クラーの言葉に困った顔になっていた。


 そして、何とも言えない感情になっていたのは言うまでもなかった。


「ただ、一つ言えることだけがあります。

 それは、これまでの編成と違ったので、ここで、撃ってきたのでしょう」

 クラーの言葉には、まだ続きがあった。


「成る程……」

 ハイネル伯は、何とも言えない感情が一気に消えた。


 そして、腕組みをして考え込んだ。


「???」

 ハイネル伯の様子を注意深く、ロデックは見ていた。


 ハイネル伯はチャラそうな見た目とは反して、意外と気が付く人間であることを知っていたからである。


 つまり、何かに気が付いた事は明白だった。


「このまま進めば、どうやら、ど偉い目に遭いそうだな!」

 ハイネル伯は、爽やかそうな表情でそう結論を出した。


「……」

 クラーは、絶句していた。


「!!!」

 ロデックは、やっぱりと言った表情になっていた。


「全艦、砲撃。

 然る後、右舷回頭!」

 ハイネル伯は、結論を出してすぐに、命令を下した。


「閣下……?」

 クラーは、最初の命令ではなく、最後の命令に反応せざるを得なかった。


 とは言え、どう反応していいのかが分からない。


「全艦砲撃後、右舷回頭」

 ロデックの方は、クラーと正反対に、命令を実行させるべく、動いていた。


 クラーは、それを横目に見て、呆けている場合ではないと思い直した。


「かっ……」

とクラーが、言葉を発しようとした所、

「思うに、クライセン公は、自分の艦隊の力量を測ったのでは?

 となると、砲撃の度に、それは正確になってくる」

とハイネル伯が、クラーの求めより先に、命令の説明をした。


「……成る程……」

 クラーは、先を越されたので言葉に詰まりながらもそう言う他なかった。


 言っていることはよく分かる。


 そして、一旦離れて、サラサ艦隊の来援を待つべきだろうという判断にも納得出来た。


 クラーからの反論がなかったので、ハイネル伯は、大きく頷いた。


 これは、自分への賛美であった。


 やはり、この辺がチャラいと言われる所以であろう。


「しかし、閣下、それですと、左舷回頭では?」

 クラーは、イヤイヤそこではないと思い直して、尋ねた。


 右舷回頭では、サラサ艦隊との距離が開く方向であるのは明らかだからだ。


「私の最初そう考えたが、そっちだと、ワタトラ艦隊の進路を塞ぐ恐れがある。

 私がこの艦隊を指揮してから、ワタトラ伯との連携は今回が初めてだからな。

 それより、あちらはあちらで自由に動いて貰った方が、いいと思ったのさ」

 ハイネル伯は、キラキラした瞳でそう言った。


「……」

 クラーの方は逆に、何かずっしんと重いものが載ったように目が泳いでいた。


 言っていることはよく分かるのだが、キラキラチャラチャラ感が気になってしまう。


 何か、自分だけがもの凄く慎重になりすぎて、余計な気を揉んでいるだけのような感じがしてくるからだった。


 まあ、そんな事よりも、始末の悪い事に、説明に納得出来てしまう点だった。


 ハイネル艦隊とサラサ艦隊では、あまりにも特徴が違いすぎている。


 前任のハイゼル侯の時もそうだった。


 なので、合流して戦うより、持ち場を決めて戦った方が、より良い戦いができると思われた。


 ドッカーン!


 艦隊は、第2射を砲撃すると共に、右舷回頭を始めた。


 それは、クラーの司令官はこうあるべきと言う固定観念を破壊するものだったのかも知れない。


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