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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第4巻  作者: 妄子《もうす》
40.第4次アラリオン海海戦

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22/50

その22

「敵艦隊発砲」

 向こうと同じく、副官のロデックが報告してきた。


 バッシャン、バッシャン……。


 そして、同様に、報告後に海面に着弾した。


 ここまでも同じだった。


 そして、指揮官の反応までも同じ……?


 いや、ハイネル伯は、爽やかな分、暗い印象がなかった。


 なので、周りもそんなに深刻には受け止めていなかった。


 こっちが撃ったのだ。


 向こうが撃ち返すのは当然と思っていた。


 今は、ハイネル艦隊ではあるが、前はハイゼル艦隊だったのだから、エリオ艦隊との激闘は何度も経験している。


 その意味では、艦隊全体の動揺が全くなかった。


「うーん……」

 ハイネル伯は、考え込んでいたのだが、纏う空気がそうではなかった。


「閣下、第2射の準備出来ていますが……」

 ロデックが、指揮官が命令を下さないのを見て、戸惑っていた。


 恐らく副官のロデックが、最初に指揮官の異変に気が付いたのだろう。


 その戸惑いがあったお陰で、違和感が周りにも伝達していった。


「第2射、砲撃せよ」

 ハイネル伯は、いつも通りの表情で命令を下した。


 命令が遅れたが、当初の予定通りの命令だった。


「全艦、砲撃!」

 ロデックが、伝令係に指揮官の命令を伝達した。


 ドッカーン!ドッカーン!


 ハイネル艦隊から、再びエリオ艦隊へと砲撃がなされた。


(いかんな……)

 クラーは、指揮官の異変に気が付かなかった事に対して焦っていた。


 ロデックは長年ハイネル伯と行動を共にしていたので、チャラい笑顔の中にも戸惑いなどを感じる事が出来た。


 だが、クラーは、自分はまだその段階にいない事を思い知らされた。


 当初の予定通り、ただただ慎重に事を進めているだけだと思っていたが、どうやら違うらしい。


「閣下、何か、ご懸念でも?」

 クラーは、率直に尋ねる事にした。


 観察していても仕方がない事だからだ。


「意外に早く撃ち返してきたので、驚いたよ。

 クライセン公は、こんな距離でも撃ってくるのかい?」

 ハイネル伯は、ニコニコしながらそう聞いてきた。


 深刻そうに考えていないようだが、そうでもないのかも知れない。


「その都度、その都度、対応は変わっていましたね」

 クラーは、ハイネル伯の質問に端的にそう応えた。


 しかし、心情は複雑であった。


 これまで、どれだけ、煮え湯を飲まされてきたかを思い出していたからだ。


「私が言うのも何々のだが、この距離では当たりそうにはなかったけど」

 ハイネル伯は、この距離で撃ち返してきた理由を考えているようだった。


「そうですな、今の敵の艦隊編成では難しい距離ですな」

 クラーは、ハイネル伯に同調した。


「前の編成では、当てられる距離なのか?」

 ハイネル伯は、相変わらず笑顔だが、驚いてはいるようだ。


 ただ、彼の名誉の為に言っておくが、事前に情報を仕入れていなかった訳ではない。


 実際にその場に立たされた場合と資料で読む場合で、実感が湧かないというか、整合性がとれないというか、そう言った感覚になる場合が多い。


「まあ、それでも、ちょっと遠いかも知れません」

 クラーは、ハイネル伯の驚きにそう答えた。


「ならば、何故撃ってきたのだ?」

 ハイネル伯は、更に質問してきた。


 ハイネル伯が得た情報では、エリオは合理主義者であった。


 そのエリオが、無駄な事をするとは到底思えなかったのだった。


 そう思う所が、ハイネル伯の優秀さを物語っていた。


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