その21
「敵艦隊発砲」
シャルスが、状況を報告した。
バッシャン、バッシャン……。
報告後に、無数の砲弾が海面を叩いた。
「ハイゼル侯の時と同様に、先手を取られましたね」
マイルスターが、和やかにそう言った。
当然、そこに揶揄いなど、盛りだくさんだった。
自分の命が掛かっているというのに、こう言った態度を取るのは、エリオに対しての絶対的な信頼からだろう。
いや、ただの好奇心か?
まあ、何れにしろ、しょうもない事である。
「うん、先手を取られたね……」
エリオは、マイルスターに同意した。
が、心ここにあらずといった感じだった。
先に手を出された事より、次に何をしてくるかに興味が移っていたからだ。
そして、ハイゼル侯とはどうにも違うと感じていた。
ハイゼル侯は、自他共に認める勇猛な提督だった。
なので、こういう場合は、最大戦速で突っ込んでくるのであった。
だが、今指揮を執っているハイネル伯は、違う。
よく言えば、慎重さがあった。
つまり、何が何でも突撃だという感じではなかった。
まあ、悪く言えば、モタモタしている感がしていた。
とは言え、これに関しては、ハイゼル侯の方がおかしいのかも知れない。
それを割り引いたとしても、エリオは違和感を感じていた。
「敵艦隊の最前列を砲撃せよ」
エリオは、いきなり命令を下した。
「えっ……」
妙な期待をしていたマイルスターは、思わぬ命令に絶句していた。
まあ、珍しい事ではないが……。
「引き付けてから砲撃の筈では?」
シャルスの方は、直ぐにエリオに確認を取った。
「うん、当てなくていい。
といより、当たらないだろう、この距離では。
まずは、牽制だ」
エリオは、命令の説明をした。
説明の間も、視線はハイネル艦隊から外さなかった。
嫌な感じというか、戸惑いの感じを持っていたからだ。
そして、このまま推移すると、敵のペースに乗ってしまう。
その時、思わぬ窮地に陥る可能性もある。
なので、この砲撃で、敵の思惑には乗らないという意思表示する必要があると考えたのだった。
でもね、その言い方だと、味方の水兵達を大いに刺激するんですけどねぇ……。
「全艦、敵の最前列に向けて、砲撃を開始せよ」
シャルスは、エリオの命を受けて、伝令係に指示を送っていた。
「敵の動きと共に、新造艦隊への配慮ですか?」
絶句していたマイルスターは、エリオにそう尋ねた。
妙な感覚を覚えたエリオが、いち早く手を打ってきたのに安心していた。
とは言え、その妙な感覚というのが、マイルスターには分からなかった。
「まあ、敵のペースには合わせたくないという事さ」
エリオは、そう答えた。
「成る程、嫌がらせですな」
マイルスターは、うんうんと和やかに頷いていた。
「……」
エリオは、それに対しては何の反応もしなかった。
戦いである以上、敵に対しては嫌がらせをするのは当然だからだった。
まあ、という訳ではなく、砲撃後の敵の動きを注視していたからだ。
ドッカーン!ドッカーン!
エリオ艦隊の反撃が始まったのだった。




