その2
「!!!」
マイルスターの質問に、エリオの表情が変わった。
そして、何故かシャルスの方を確認するかのように一度目を向けた。
(???)
シャルスは、意外そうな表情を浮かべたのは言うまでもなかった。
だが、エリオは直ぐに、シャルスから視線を外した。
そして、珍しく考え込むように腕を組んだ。
あっ、エリオの名誉の為に言っておきたい。
これまで、マイルスターの質問(?)に対して、考えていなかった訳ではなかった。
と言うより、もうその通りやってくれと言った感じだったので、特に反応を示さなかっただけだ。
だが、この質問に関しては、エリオにとって本当の質問だった。
なので、エリオ自身が答えを出さない訳にはいかなかったのだ。
(新造艦隊を出さないとなると、中央艦隊が主力となる……)
エリオは、ライヒ子爵マサオの顔が脳裏に浮かんだ。
そうする事は、特に悪手であるという感じではなかった。
寧ろ、仕事を押しつける上で絶好の機会である。
だが、そこは、『漆黒の闇』、すんなりとはそう思わないのである。
「敵将、確か、ハイネル伯だったよね?」
エリオは、漸く口を開いた。
「はい、左様ですが……」
マイルスターは、突然の質問に、和やかに戸惑っていた。
まあ、慣れてはいるので、同時に漸くやる気になってくれたという安心感を持った。
「ハイゼル侯と比べると、落ち付いた人物だと聞いているが……」
エリオは、伯に対しての人物評価に戸惑っていた。
そもそも猛将と比べるのは、どうなのだろうか?
「まあ、そうでしょうな……」
マイルスターは、苦笑いした。
「そういう人物が出てくるという事は、どういう事なのだろうか?」
エリオは、また訳の分からない質問をしてきた。
(それを聞いているのは私共の方なのですが……)
マイルスターは、再び和やかに苦笑するしかなかった。
まあ、エリオにしても答えを求めていた訳ではないことを察していたのだろう。
「そういう人物だから、激戦になるとは思えないのだが……」
エリオは、そう言った。
「……」
マイルスターは、それに対して敢えて何も言わなかった。
シャルスも当然事の成り行きを見守っていた。
彼にしてみれば、これから一気に来る命令に備えている面もあった。
「とは言え、司令官の人柄で戦い方が全て決まる訳ではないからな……」
エリオは、周りの空気など気にせずに続けた。
一連の言動は、自分の考えを纏める為の作業である。
それを知った上で、マイルスターとシャルスは待っていたのだった。
だが、それにしてもまどろっこしすぎるねぇ……。
「さて、どうしたものか……」
エリオは、判断に困っているようだった。
とは言え、その言葉を聞いた2人は、結論に向かっていると思っていたので、ガクッと来たのは言うまでもなかった。
「殿下は、後ろで操っている人物が気になるのですか?」
マイルスターは、仕方なく口を開いた。
切迫している状況だ。
結論は早い方がいい。
「まあ、操っているのは大公である事は、誰しも分かっていることだけどね」
エリオは、マイルスターの質問ににべもないと言った感じで答えた。
因みに、大公とは、ウサス帝国の宰相フレックスシス大公である。
「……」
マイルスターが、唖然としたのは言うまでもなかった。
と言うか、何を考えているか、相変わらず、分からんと言った感じだろう。
「今回は、再編成した艦隊の実力を早めに知っておきたいのだろうね」
エリオは、そう言った。
結論を出したはずなのに、何故か同じよう分析中の感じの言い方が続いている。
(もう結論が出ていますよね?)
マイルスターは、心の中で、エリオにそうツッコミを入れた。
何だか、まどろっこしい状態なのだが、そこは流石のマイルスター、和やかさは一切崩さなかったのであった。




