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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第4巻  作者: 妄子《もうす》
40.第4次アラリオン海海戦

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その18

 章題が海戦なのに、海戦が中々始まらない。


 ただ、各艦隊は、海戦となる筈の海域へと続々と集結しつつあった。


 その中で一番乗りしたのは、エリオ艦隊とハイネル艦隊だった。


 会敵したので、間もなく戦闘が開始される筈である。


「うーん、何か、違うな……」

 ハイネル伯は、首を傾げていた。


 エリオ艦隊とハイネル艦隊の距離は、まだ砲撃を仕掛けられるものではなかった。


 だが、互いに視認した後から、詳細な情報が入ってきていた。


 ハイネル伯が首を傾げていたのは、その報告を受けた直後だった。


「敵総旗艦艦隊の総数14です。

 事前の情報と変わりはありませんが……」

 首を傾げたままのハイネル伯に、艦隊参謀長クラーがそう言った。


 司令官が何を考えているか、不明だったからだ。


「クライセン公は、戦闘狂で、自ら前に出てくると聞いていたのだが、そういう陣形ではないよな」

 ハイネル伯は、首を傾げている理由をそう述べた。


 エリオ艦隊は、新造艦10隻を全面に出し、いつもの4隻は後方に陣取っていた。


 ま、後方と言っても、陣形は一体だったので、最後尾と言った方がいいかも知れない。


 それにしても、ここでもエリオは戦闘狂と思われているのだった。


 まあ、敵にして見れば、そう思っていないとやってられないのかも知れない。


 クラーは、ハイネル伯の言葉を聞いて、ある意味納得した。


 そして、それに対しての見解を述べようとした。


 だが、先に口を開いたのは、ハイネル伯だった。


「もしかして、我々は舐められている?」

 ハイネル伯は、そう言って首を戻しながら、腕を組んだ。


 しかし、怒っているという訳ではなかった。


 ……。


 今度は、クラー始め、周りが黙って首を傾げたくなっていた。


 ハイネル伯の態度がどうも勝手が違うと感じていて、どう反応していいか分からなかった。


 ハイネル伯の第1印象は、明るい性格の持ち主だという事はすぐに分かる。


 というより、チャラいかな?


 でも、まあ、流石に皇統に連なるだけあって、下品さは微塵も感じられなかった。


 そして、やる事が意外に卒がなかった。


 それは、十分な有能性を示していた。


 だが、こう言った謎の行為が多いのも確かである。


 それが、嫌味に感じられないのも不思議なものである。


「……」

 ハイネル伯は、しばらく待っても反応が返ってこないので、今度は伯の方が反応に困っていた。


 それに気付いたクラーは、現実に戻って来れた。


「ああ、それは恐らく射程を合わせているのでは?

 練度が違うと、有効射程がどうしても違ってきますから」

 クラーは、慌ててそう答えた。


「ふむ、舐められている訳ではないのか……」

 ハイネル伯は、安心したような不安になったような複雑な表情になった。


 そして、ハイネル伯は、続けて、

「砲の数が多くなる分、迂闊に飛び込めないという事か……」

と現状を理解した事を言った。


「仰る通りかと存じます」

 クラーは、ハイネル伯に同意した。


 エリオの戦術的意図は明白だった。


 敵を引き付けて、一気に叩こうと言った基本的な戦術だった。


「とは言え、ここまで来た以上、戦わない訳にはいかないだろう」

 ハイネル伯は、思わぬ言葉を口にした。


 この辺が、チャラいと思われる所以になっているのだろう。


 クラーは、この言葉にピックと反応した。


「しかしながら、事前に気を付けているのと、気が付かないのでは結果は雲泥の差となって現れるでしょう」

 クラーは、ハイネル伯が見せたチャラさとは真逆な態度で冷静にそう言った。


「確かにその通りだ」

 ハイネル伯は、大いに納得した。


 エリオに散々痛い目に遭わされてきたクラーからの言葉である。


 きちんと聞くべきだと思ったのだろう。


 ただ、そう思う所が、ハイネル伯の卒のなさに繋がっているのだろう。


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