その16
傍らで見ていたフィルタは、当然、サラサの不機嫌さに驚き、緊張した。
それを横目で見たバンデリックは、呆れていた。
まあ、勿論、呆れているのはフィルタではなく、サラサに対してだった。
とは言え、ここではそれを指摘する訳にはいかない。
話がややこしくなるだけだからだ。
こうして、大人の対応として、バンデリックは、次のフェーズに進むのであった。
「敵総旗艦艦隊と北方艦隊の場合、数がこちらが上。
艦隊配置もこのまま海戦に突入すると、我が方が有利です。
何か、ご懸念の点でもありますか?」
バンデリックは、現状説明をして、一応尋ねた。
「その有利な状況がいつまで持つのかしらね」
サラサは、一応尋ねてきたバンデリックに対して、そう答えた。
自分で答えが分かっている事を聞いてきたので、気に食わないといった感じだ。
とは言え、フィルタもいる。
状況分析は、出来るだけ詳しくしなくてはならないと言う事である。
「北方艦隊の能力に懸念でも?」
バンデリックは、更に尋ねた。
「能力というより、向こう側の煽りが問題ね」
サラサは、かなり不機嫌にそう言い放った。
色々と思い出すだけでも、頭にくるからだ。
当のエリオは、絶対に煽っているつもりもないし、その自覚は勿論ない。
これは、本当に始末が悪い。
伊達に2つ名が付いた訳ではないのである。
そう、この場合、エリオがどう思っているかではなく、周りがどう思うかが問題なのである。
本人は、何も考えていないって……、それは言いっこなしですよ。
「ハイネル伯次第という事ですな」
バンデリックは、当たり前の事をさも発見したように言った。
ここまで来ると、流石にわざとらしいか?
それ、さっき、サラサも言ってた事じゃない……。
「ここまで順調に来ているから、このまま行って欲しいわね」
サラサの方は、面倒臭そうにそう続けた。
どうやら、不思議な事に、切に願っているという訳ではなさそうだ。
サラサの事である。
どんな状況になっても、対応する自信があるのだろう。
(閣下は、いつも自信たっぷりなのだけど……。
今回は……。
まあ、自信がないという訳ではなさそうだけど……)
フィルタは、2人のやり取りを間近で聞きながらそう感じていた。
副官らしく、上官達の思惑というか、気分を察するようになっていた。
短期間で、凄い事である。
だが、まだそれを口にするだけの段階には至っていないようだ。
ジッと2人のやり取りを聞いているだけだった。
とは言え、これは副官としての役割を忠実に守っている事にもなる。
上官達のやり取りを邪魔する程、迷惑な事はないからだ。
バンデリックは、フィルタに分かり易い様に一つ一つ確認を取っていた。
それをフィルタが感じ取っていると、バンデリックは理解した。
だが、一方で、一つ一つ確認したお陰で、まだ、何か懸念点があると確信した。
これまでの事は、ある程度予測出来たものである。
では、後は何だろうか?
意外というか、結構、重要なもののような気がしてきたバンデリックであった。
なので、バンデリックは、よーく考えたのだった。




