その15
さて、今回も手伝い戦に駆り出されたサラサである。
「閣下、リーランはアラリオン海に、3艦隊を派遣してきたとの事です」
副官になったフィルタは、そう報告した。
まだ、ぎこちない所はあるが、立派に副官としての役割を果たしていた。
「数的不利ですな……」
バンデリックは、含みのある言い方をした。
「そうね」
サラサは、バンデリックの言葉を肯定しただけだった。
……。
なので、間が空いてしまった。
「なのに、クライセン公はいつも何故か数的不利のまま、戦いに突入しますよね」
バンデリックは、仕方がないので自分で言葉を繋いだ。
報告によると、エリオ艦隊と帝国北方艦隊は、確実に衝突するコースに入っている。
どちらも進路を変えないどころか、速度も変えていない。
北方艦隊の方は、数が多いので、それでいい筈である。
だが、エリオ艦隊に関しては、普通に考えれば、もうちょっといいやり方があるようにみえた。
「まあ、味方に有利ならそれでいいんじゃない」
サラサは、バンデリックの思惑など気にしていないようだった。
サラサの態度に、バンデリックは少し心配になるのだった。
「何か、気になる事でも?」
バンデリックは、取りあえず素直に聞いてみた。
まずは、状況を把握しなくてはならないからだ。
「まあ、今回の手伝い戦は、ハイネル伯次第かなと思っているだけよ」
サラサは、気のない返事をしていた。
戦いが目前に迫っている状況下、意外な反応だった。
手伝い戦とは言え、目がキラキラ、いや、ギラギラ、いや、どちらにしても女性に対しての表現としては不都合だな……。
兎に角、やる気に満ちているのが、これまでのサラサだった。
何か、心境の変化でもあったのだろうか?
まあ、出産を経たので、それによって、人生観が変わる事はよくある事である。
また、バンデリックは、心だけではなく、体の心配もしていた。
とは言え、サラサの産後の肥立ちはすこぶる良かった。
出産後、直ぐに動けるようになっていた。
関係ないが、リ・リラの方も産後の肥立ちも、すこぶる良く、バリバリと仕事をこなしていた。
こちらとしては、出産後に心境の変化が出たという事はなかったと思う、今の所は……。
まあ、人それぞれなのだろう、たぶん……。
「ハイネル伯は、ハイゼル侯に比べると、好戦的な戦術は取らないと思われます」
バンデリックは、一応そう答えた。
ハイネル伯の名が出てきたので、その辺を心配しているのかと探りを入れた格好だ。
とは言え、それはどうも核心を突いていないという確信を持っていた。
「それは比べる相手が悪いのでは?」
サラサは、そうツッコミを入れてきた。
どうやら、心、ここにあらずといった感じではないようだ。
その点では、バンデリックは、安心した。
「まあ、そうでしょうが、他に比べる相手が他にいません……」
バンデリックは、苦笑いしながらそう受け答えをした。
「そうだけど、参考にならない人を引き合いに出しても、戦いの予想にはならないでしょう。
こちらとしては、どのような事になっても、対応出来るようにしておかないとね」
サラサは、意外にも真面目に言ってきた。
「……」
バンデリックは、真面目な言葉が返ってきたので、思わず黙ってしまった。
サラサの様子を見て、更に深い事を考えている事が分かったからだ。
「何?」
サラサは、バンデリックにジッと見られたので、居心地が悪くなった。
夫婦なので、普通なそんな事ないだろうとツッコミたい。
あ、でも、そうでもないか……。
「やはり、クライセン公ですか……」
バンデリックは、やっぱ、そこに行き着くのねといった感じになっていた。
「ふん……」
サラサは、あからさまに不機嫌になるのだった。




