その14
性格も態度も明るいハイネル伯に対して、エリオはいつも通りどよんとしていた。
おっと、余計な事から入ってしまった。
今のはなしという事にしてくれませんか……?
艦橋に立っているエリオは、身動ぎもせずにいた。
傍らには、総参謀長のマイルスター、副官のシャルスが控えていた。
戦いを目前と控えているのに、全く動揺する様子もなければ、逸る様子もなく、落ち付いている。
世界最大級の艦隊を率いる総司令官である。
流石に、様になっていた。
と、描写してみたが、やはり、無理がある。
やはり、エリオはエリオである。
エリオにとって、世の中の中で、一番やりたくない仕事を今からやらないとならない。
そうなると、こうなる。
でも、まあ、そこはエリオである。
シャルスからの報告を聞いていないようで聞いているのである。
職業病なのか、報告毎に、それぞれの艦隊の駒を地図上に、自ら動かしているのであった。
- 艦隊位置 -
MR
LR
EC
SR
H
EC:エリオ艦隊
MR:中央艦隊(ライヒ子爵マサオ)
LR:西方艦隊(ルオーラ子爵リンク)
SR:サラサ艦隊
H:帝国北方艦隊(ハイネル伯)
「このままの進路ですと、帝国北方艦隊と正面衝突します。
よろしいのですか?」
マイルスターは、何も言わないエリオに確認を取った。
エリオは、戦場の情報を完全に把握している事は知っている。
なので、指示がないと言う事は、このままでいい事はマイルスターにも分かっていた。
しかし、職業上、確認をしなくてはならない。
只でさえ、水兵達に人望がないエリオである。
こうやって、速やかなる意思疎通が大事だと常々思っているマイルスターであった。
「うん、このままでいい」
エリオは、短くそう答えた。
この答えでは、当然、マイルスターは満足しなかった。
「我が方の艦隊の展開は、上手く行っています。
出撃させた艦隊を集結させた方が、数的有利になりますが」
マイルスターは、更にエリオから言葉を引き出しに掛かった。
そもそも説明が少ないのである。
エリオ艦隊は14隻、中央艦隊は23隻、西方艦隊は32隻で、合計69隻。
ハイネル艦隊は23隻、サラサ艦隊は21隻 合計44隻。
「戦いの規模を大きくしたくはない。
なるべく、各個に当たって、終わりにしたい」
エリオは、そう言った。
エリオの言葉に聞き耳を立てていた水兵達は、げんなりしたのは言うまでもない。
5艦隊の中で、一番数が少ないのである。
傲慢を通り過ぎて、アホだとしか思えないからだ。
とは言え、このアホの言う事である。
無茶な事を言っているが、過去の実績から見通しが立っているに違いないと思う他なかった。
そうじゃないと、あの世で、エリオは、水兵達にどつき回されるだろう。
いや、どんな形でもいずれは、そうなるかも知れないか……。
「総旗艦艦隊の陣形はこのままで?」
マイルスターが、また確認した。
まだまだ不十分だと思っていたからである。
今回、エリオ艦隊は子飼いの4隻の他に、10隻の新造艦を麾下に加えていた。
そして、その10隻が4隻の前に布陣していた。
「問題ない」
エリオは、再び短く答えた。
これは、10隻の新造艦に対して、合格点を付けた事になる。
エリオの名誉(?)の為に言っておくが、10隻の艦長に対して、出撃前に入念な指示を出していた。
その指示通りに、航行出来ているので、大丈夫だと判断していた。
「全艦に、このまま戦闘態勢に入るように指示します」
エリオとマイルスターの話が終わったとみたシャルスは、敬礼してそう言った。
そして、そのまま伝令係に指示を飛ばしていた。
確認を取らなくていいのか?
まあ、その辺は、この3人のあうんの呼吸という事である。




