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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第4巻  作者: 妄子《もうす》
40.第4次アラリオン海海戦

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13/49

その13

 3国の思惑が入り乱れる中、出撃させられたハイネル伯爵であった。


 艦首にいたハイネル伯は、風を受けて黄昏れてはいなかった。


 寧ろ、気持ちよさそうに風を浴びていた。


 そして、これから始まる事に対して、ワクワクしていた。


 こうした事からも分かるように、ハイネル伯は楽天家である。


 傍目から見ると、かなりチャラい性格をしていた。


 ただ、チャラそうな性格がマイナス方向に行ってはいなかった。


 それは、短期間に北方艦隊を再生した事を見ると、よく分かる。


 深刻な状態を深刻と思わせず、やれば何とかなるさという信条の持ち主である。


 そして、それは周りをヨイショする事で、プラス方向に転嫁されていく。


 そう書くと、誰かさんとは本当に真逆の性格をしている。


「閣下、お楽しみの所、申し訳ございませんが、敵の位置が知れました」

 ハイネル伯の後ろから声を掛けたのは、副官のロデックだった。


 そして、その隣には、クラー艦隊参謀長がいた。


「そう。

 で、接触するのはいつだい?」

 ハイネル伯は、後ろを振り返りながらそう聞いた。


「互いにこの速度で行くと、一両日中には会敵すると思われます」

 ロデックは、そう答えた。


「いよいよという訳か!」

 ハイネル伯は、やっぱりワクワクしていた。


 余程自信があるのだろう!


 あ、因みに敵というのは、エリオである。


 たぶん、分かっていると思いますが……。


「閣下、楽しげですな」

 ロデックは、遠慮なしにそう言った。


 副官のロデックは、伯とは長い付き合いで、気心が知れている仲である。


 伯がああいう性格なので、堅苦しくなく、遠慮なく物を言える人物をそばに置いているのだった。


「別に、楽しくはないさ。

 とんでもない、任務を押し付けられたからな」

 伯はワクワクしながら、ロデックに反論した。


 なので、全く説得力がなかった。


「閣下、私が言うのもなんですが、十分にお気を付け下さいませ」

 黙っていたクラーが口を開いた。


 流石に、司令官の態度が気になったのだろう。


「クラー、そんなに遠慮した言い方をしなくてもいいさ。

 貴公の言っている事は、正しい」

 ハイネル伯は、クラーにそう言った。


 クラーは、故ヘイゼル侯とその父親であるヘイゼル侯の指揮する艦隊の分艦隊司令官を務めていた。


 サキュス強襲の時は、サキュバスで残留艦隊をまとめており、何とか生き延びていた。


 そして、卑屈になっているのは、やはり、スワン沖海戦での失態にあるのだろう。


 クラー分艦隊が、エリオ艦隊に弄ばれたので、無様に取り逃がす事となったと本人は責任を感じていた。


「しかし……」

 クラーは、まだ卑屈な思いを持っていた。


 だが、その言葉をハイネル伯が制した。


「貴公の経験は貴重な物である。

 そして、北方艦隊の再建がこうも早く出来たのは、貴公のお陰でもある」

 ハイネル伯はお世辞ではなく、心からそう思っていた。


「はあ、勿体ないお言葉でございます」

 クラーは褒められたのはいいが、微妙な表情をしていた。


「大体考えてみろ。

 今回対戦する『漆黒の闇』には、誰も勝ててないんだ。

 同等能力を有する『銀の魔女』や当代一の提督であるルディラン侯でさえ、叩きのめせないでいる。

 そうなると、我々みたいな人間は、戦い続ける事によって、何とかしなくてはならない。

 そうなると、クラーの経験が大いに生きてくるのだよ」

 ハイネル伯は、とくとくと説明した。


 とは言え、終始軽い口調なので、説教という印象は受けなかった。


 それは、励ましの言葉なのだろう。


「畏まりました。

 微力を尽くします」

 クラーは、そう言って決意を固めるのだった。


 それを見て、ハイネル伯は大きく頷いた。


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