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学園物語 ~MIYUKI'sカフェ~  作者: 優貴(Yukky)


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第3話 「文化祭実行委員と二人のヒロイン」

ゴールデンウィークを目前に控えたある日。

青葉学園の教室は、朝から妙な熱気に包まれていた。

理由は一つ。

文化祭だ。

青葉学園の文化祭は地域でも有名で、毎年多くの来場者が訪れる。

生徒たちにとっても一大イベントだった。

「今年こそメイド喫茶だ!」

「いや、お化け屋敷だろ!」

「映画上映とかどうだ?」

「予算足りるわけないだろ!」

朝から教室は大騒ぎ。

そんな中、悠斗は窓際の席でぼんやり外を眺めていた。

すると隣の席に誰かが座る。

「おはよう」

聞き慣れ始めた声。

月城結奈だった。

「おはよう」

「眠そう」

「昨日ゲームしてた」

「何時まで?」

「二時」

「子供?」

「高校生です」

「同じだよ」

結奈はくすっと笑った。

最近はこうして自然に話せるようになっていた。

転校してきた当初の距離感が嘘みたいだ。

そこへ健太がやって来る。

「おはようございますお二人さん!」

「朝からうるさい」

「仲良しだなぁ」

「違う」

「違わない」

結奈が即答した。

「え?」

「友達でしょ?」

「まあそうだけど」

「じゃあ仲良し」

「理屈がおかしい」

「おかしくない」

健太はニヤニヤしていた。

「青春だねぇ」

「殴るぞ」

ホームルーム。

担任の佐々木先生が教壇に立つ。

「文化祭実行委員を決めるぞ」

教室が静かになる。

そして――

誰も手を挙げない。

「毎年これだな」

先生が呆れる。

「誰かいないか?」

沈黙。

誰も目を合わせようとしない。

その時だった。

「私、やります」

結奈が手を挙げた。

教室がざわつく。

「おおー!」

「転校生すげぇ!」

「助かる!」

先生も嬉しそうだ。

「よし、女子は月城に決定」

問題は男子だった。

しかし当然。

誰も手を挙げない。

すると健太が立ち上がる。

嫌な予感しかしない。

「先生!」

「なんだ中村」

「桜井がやりたいそうです!」

「おい」

教室爆笑。

「言ってない!」

「今言った」

「勝手に言うな!」

先生は苦笑する。

「桜井、どうだ?」

「いや俺は……」

断ろうとしたその時。

「悠斗くん」

結奈がこちらを見る。

「一緒じゃ嫌?」

「……」

教室中の視線が集まる。

健太なんて腹を抱えて笑っている。

逃げ場がない。

「……分かったよ」

「ありがとう」

結奈は嬉しそうに笑った。

その笑顔に教室がざわつく。

「可愛い」

「月城さん笑ったぞ」

「やばい」

男子たちの声が聞こえる。

悠斗はため息をついた。

面倒なことになった。

放課後。

初めての実行委員会。

文化祭のテーマ決めや各クラスの出し物確認など、思った以上に忙しい。

気付けば一時間以上経っていた。

「疲れた……」

校舎を出た頃には夕方だった。

「お疲れさま」

結奈が隣に並ぶ。

「実行委員ってこんな大変なんだな」

「私は楽しかった」

「元気だな」

「文化祭好きだから」

「意外」

「そう?」

「もっと静かなタイプかと思ってた」

結奈は少し考える。

そして小さく笑った。

「悠斗くんの前だからかも」

「え?」

「なんでもない」

「気になるんだけど」

「秘密」

二人は並んで歩く。

自然と向かう先は同じだった。

MIYUKI'sカフェ。

もはや日課になっている。

カラン。

扉を開ける。

「いらっしゃ――」

元気な声が途中で止まる。

美雪だった。

「……一緒なんだ」

「会議終わったからな」

「へぇ」

笑顔。

だが少しだけぎこちない。

悠斗は違和感を覚えた。

「好きな席どうぞー」

「なんか機嫌悪くない?」

「悪くないよー」

「本当に?」

「本当だよー」

語尾が妙に伸びている。

絶対に何かある。

結奈が楽しそうに見ていた。

「仲良いね」

「どこが」

「見てれば分かる」

「気のせいだ」

「そうかな」

結奈は微笑む。

「夫婦みたい」

「ぶっ!」

悠斗が飲みかけの水を吹きそうになる。

カウンターの向こうでは美雪まで固まっていた。

「な、何言ってるの!?」

「違う?」

「違う!」

悠斗と美雪の声が重なる。

数秒の沈黙。

結奈が吹き出した。

「ほら」

「何が」

「息ぴったり」

「偶然だ!」

「うんうん」

全然信じていない顔だった。

美雪は顔を赤くしながら注文を取りに行く。

悠斗は頭を抱えた。

「勘弁してくれ」

「楽しかった」

「俺は楽しくない」

「嘘」

「なんでだよ」

「少し嬉しそうだった」

「気のせい」

「ふふっ」

その日の閉店時間が近付いた頃。

結奈が先に帰ることになった。

「じゃあまた明日」

「おう」

「おやすみ」

「まだ夕方だぞ」

「細かい」

「お前も言うようになったな」

結奈が帰った後。

店内には悠斗と美雪だけが残っていた。

いつもなら自然な空気。

だけど今日は少し違う。

「ねぇ」

美雪が口を開く。

「ん?」

「結奈ちゃんってさ」

「うん」

「悠斗くんのこと好きなのかな」

「は?」

思わず変な声が出た。

「何言ってるんだよ」

「だって」

美雪はストローを指で回す。

「十年間覚えてたんだよ?」

「だからって」

「普通そこまでしないと思う」

悠斗は言葉に詰まった。

確かにそうだ。

もし自分だったら。

十年間も誰かとの約束を覚えていられるだろうか。

「それに」

美雪は小さな声で続けた。

「今日も楽しそうだったし」

「そうか?」

「うん」

「考えすぎだろ」

「そうかな」

美雪は窓の外を見る。

夕焼けが差し込む店内。

どこか寂しそうな横顔だった。

「美雪?」

「え?」

「どうした?」

「なんでもない!」

いつもの笑顔。

だけど。

どこか無理をしているように見えた。

その夜。

帰宅した悠斗はベッドに寝転がる。

文化祭。

結奈。

美雪。

頭の中に二人の顔が浮かぶ。

そして気付く。

最近、自分の日常は少しずつ変わり始めている。

一方その頃。

美雪は自室のベッドで天井を見つめていた。

「なんなんだろう……」

胸の奥のモヤモヤ。

結奈と悠斗が話していると気になる。

一緒にいると落ち着かない。

その理由はまだ分からない。

でも――

彼女の恋心は、確かに少しずつ動き始めていた。

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