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学園物語 ~MIYUKI'sカフェ~  作者: 優貴(Yukky)


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17/20

第17話 「揺れる三人の距離」

月曜日。

文化祭が終わってから一週間が過ぎていた。

だが、桜井悠斗の日常は以前のようには戻らなかった。

教室の窓から見える青空は変わらない。

授業のチャイムも変わらない。

クラスメイトの騒がしさも変わらない。

それなのに。

「おはよう、悠斗くん」

朝霧結奈が笑顔で挨拶してくるだけで緊張する。

「お、おう」

自分でも分かるくらい不自然だった。

結奈は少しだけ苦笑する。

「まだ慣れない?」

「何が」

「私のこと」

「……」

図星だった。

結奈は告白した。

美雪も告白した。

その事実があるだけで、今までと同じようには接することができない。

「おーい桜井ー!」

健太が後ろから飛びついてくる。

「ぐえっ!」

「青春してるなぁ!」

「してねぇ!」

「いやしてる!」

「してない!」

「してる!」

「小学生か!」

教室中が笑った。

「そういえば」

女子の一人が言った。

「今度の土曜日って駅前で秋祭りあるよね」

「あーあるある!」

「毎年やってるやつ!」

「花火も上がるらしいぞ」

教室が盛り上がる。

その話を聞きながら、美雪は少し考え込んでいた。

秋祭り。

毎年楽しみにしているイベント。

だけど今年は違う。

悠斗がいる。

結奈もいる。

(どうしようかな……)

放課後。

悠斗はいつものようにMIYUKI'sカフェへ向かった。

カラン。

ドアを開ける。

「いらっしゃいませ!」

美雪が笑顔で迎える。

昨日のことがあったとは思えないほどいつも通りだった。

「こんにちは」

奥の席には結奈もいた。

もう完全に常連である。

「なんでいるんだ」

「勉強」

「またか」

「また」

結奈は平然としていた。

「仲良いねぇ」

美雪がニヤニヤする。

「してない」

「してる」

「してない」

「してる」

「お前らも小学生か」

店長が笑った。

店内が笑いに包まれる。

だけど。

悠斗は気付いていた。

美雪と結奈。

二人とも笑っている。

仲良く話している。

それなのに。

時々、お互いを見る目が少しだけ違うことに。

ライバル。

そんな言葉が頭に浮かぶ。

夜。

閉店後。

美雪は店の前を掃除していた。

すると。

「手伝う」

結奈が隣へ来た。

「珍しい」

「そう?」

「いつもは帰るのに」

「今日はなんとなく」

二人で並んで掃除する。

少しだけ沈黙が続いた。

やがて。

結奈が口を開く。

「美雪ちゃん」

「ん?」

「私、負ける気ないから」

箒を持つ手が止まる。

美雪はゆっくり顔を上げた。

結奈は真剣だった。

冗談ではない。

本気だ。

「そっか」

美雪は笑う。

「私もだよ」

結奈が少し驚く。

「負けたくない」

美雪の瞳も真っ直ぐだった。

「だから」

「だから?」

「遠慮しない」

静かな空気。

しかし不思議と嫌な感じではない。

結奈は小さく笑った。

「うん」

「正々堂々ね」

「もちろん」

二人は見つめ合う。

そして。

同時に笑った。

恋のライバル。

だけど。

お互いを嫌いにはなれなかった。

その頃。

何も知らない悠斗は自室で参考書を開いていた。

だが。

内容が全く頭に入らない。

「はぁ……」

美雪。

結奈。

どちらも本気。

どちらも大切。

だから決められない。

しかし。

逃げ続けるわけにもいかない。

その時。

スマホが震えた。

グループチャット。

『秋祭り行く人ー?』

健太だった。

『行く』

『行く』

『花火見たい』

『屋台!』

どんどん返信が増える。

すると。

美雪。

『私も行く!』

続いて。

結奈。

『私も』

嫌な予感がした。

そして。

『桜井も来るよな?』

健太。

『まぁ』

送信した瞬間。

『やった!』

美雪。

『楽しみ』

結奈。

嫌な予感がさらに強くなる。

土曜日。

秋祭り当日。

駅前広場は大勢の人で賑わっていた。

屋台。

提灯。

浴衣姿の人々。

夏祭りとは違う落ち着いた雰囲気。

「遅れてごめん!」

最初に来たのは美雪だった。

そして。

悠斗は思わず言葉を失う。

浴衣姿。

淡い桜色。

髪も少しアレンジしている。

いつもとは全然違った。

「どう?」

「……似合ってる」

一瞬で顔が赤くなる美雪。

「ありがとう」

嬉しそうだった。

しかし。

その数分後。

「待った?」

結奈が現れる。

紺色の浴衣。

落ち着いた雰囲気。

大人っぽい。

そして。

悠斗はまた固まった。

「似合ってる」

「ありがとう」

結奈も少し照れていた。

「なんかずるい!」

美雪が抗議する。

「何が」

「二人とも反応同じ!」

三人とも笑う。

しかし。

周囲から見ると完全に恋愛ドラマだった。

屋台を回りながら。

射的。

金魚すくい。

りんご飴。

様々な屋台を楽しむ。

その途中。

「悠斗くん!」

美雪が腕を引っ張る。

「見て!」

その瞬間。

反対側から結奈が言う。

「悠斗くん」

挟まれた。

完全に。

「お前らなぁ……」

二人は笑う。

だけど。

どちらも本気だった。

そして夜。

花火の時間。

河川敷。

大勢の人が空を見上げる。

ドーン。

大輪の花火が咲く。

「綺麗……」

美雪が呟く。

「うん」

結奈も見上げる。

その横顔を見ながら。

悠斗は思う。

二人とも魅力的だ。

二人とも優しい。

二人とも大切だ。

だからこそ。

苦しい。

その時。

ドーン。

大きな花火が夜空に広がる。

そして。

その光の中で。

美雪と結奈。

二人は同時に悠斗を見ていた。

言葉はない。

だけど。

想いだけは伝わる。

「私は負けない」

「私も負けない」

そんな声が聞こえてきそうだった。

花火大会の夜。

三人の距離は近付いた。

しかし同時に。

選ばなければならない未来も近付いていた。

恋の答えまで。

残された時間は、もうそれほど多くなかった――。

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