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学園物語 ~MIYUKI'sカフェ~  作者: 優貴(Yukky)


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16/20

第16話 「笑顔の裏側」

放課後。

MIYUKI’sカフェはいつも通り賑わっていた。

カラン。

ドアベルが鳴るたびに、美雪は笑顔で声を出す。

「いらっしゃいませー!」

「こちらのお席どうぞ!」

その声は明るく、店内を一気に華やかにする。

だが、その笑顔を見ている悠斗は、少しだけ違和感を覚えていた。

(……なんか、無理してないか?)

「お疲れ」

休憩中、悠斗はカウンターの奥で声をかけた。

「んー?全然平気だよ!」

美雪は即答する。

コーヒーを片手に、いつもの調子だ。

「今日は特に忙しいな」

「文化祭の余韻だね」

「そうか」

「うん!」

笑顔。

完璧な笑顔。

でも。

悠斗にはわかっていた。

少しだけ、目の奥が笑っていない。

「なぁ」

「ん?」

「疲れてるだろ」

その一言で、美雪の動きが止まる。

「……え?」

「無理してるように見える」

一瞬の沈黙。

そして美雪は、すぐに笑った。

「してないよ?」

「いつも通りだし!」

明るい声。

でも少しだけ早口だった。

悠斗はそれ以上何も言わなかった。

その日の閉店後。

客が帰り、店内が静かになる。

美雪はテーブルを拭きながら、ぽつりと言った。

「ねぇ」

「ん?」

「私さ」

手が止まる。

「ちゃんと“選ばれる側”だと思ってたんだよね」

悠斗の動きも止まる。

「明るいし」

「店にも馴染んでるし」

「みんなと仲良いし」

少し笑う。

でもそれは、いつもの笑顔じゃなかった。

「だからさ」

「結奈ちゃんみたいな子が来ると」

言葉が詰まる。

「ちょっとだけ、怖いんだよね」

静かになった店内。

時計の音だけが聞こえる。

悠斗は何も言えなかった。

美雪は続ける。

「十年前とかさ」

「そういうの、勝てる気しないじゃん」

笑おうとしている。

でもうまく笑えない。

「でもさ」

顔を上げる。

「それでも好きって思っちゃったんだよ」

その瞬間。

空気が変わった。

「最初はただ楽しかっただけなのに」

「気付いたら苦しくて」

「気付いたら、結奈ちゃんの顔見るだけでちょっと嫌で」

自分で言って、自分で少し驚くように笑う。

「私、こんな性格だったっけ?」

悠斗は小さく息を吸った。

「美雪」

呼ぶ。

「なに?」

少しだけ震えている声。

「無理して笑うな」

その言葉で。

美雪の笑顔が崩れた。

「……っ」

一瞬、黙る。

そして。

「じゃあどうすればいいの?」

声が少しだけ震える。

「笑ってないとさ」

「普通にしてないとさ」

「怖くなるじゃん」

カップを握る手が少し強くなる。

「負けたって思いたくないし」

「嫌われたくないし」

言葉が止まる。

そして。

「……ほんとはさ」

小さく息を吐く。

「ずっと悠斗くんの隣にいたかっただけなんだよ」

静かな告白。

でも、それは今までで一番重かった。

悠斗は何も言えなかった。

美雪は慌てて笑おうとする。

「ごめん、なんか重いね」

「今のなしで――」

「なしにしなくていい」

悠斗が言った。

美雪が固まる。

「それがお前の本音だろ」

「……」

「なら、ちゃんと受け止める」

沈黙。

そして美雪は、小さく笑った。

今度はちゃんとした笑顔だった。

「ずるいね」

「何が」

「そういうとこ」

少しだけ涙を拭う。

でも、もう泣いてはいなかった。

その夜。

帰り道。

美雪は一人で歩きながら空を見上げる。

「負けたくないって思った時点でさ」

「もうダメなんだよね」

小さく笑う。

でもその目は、まだ諦めていなかった。

MIYUKI’sカフェの看板娘は。

今日、初めて“恋を自覚した女の子”になった。

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