第15話 「初めてのデート」
日曜日。
空はよく晴れていた。
駅前は朝から人通りが多い。
その中で悠斗は時計を見ながら立っていた。
「……早く来すぎたな」
約束の時間までまだ五分ある。
「おはよー!」
明るい声。
振り向くと、美雪が駆けてきていた。
私服姿。
白いワンピースに薄いカーディガン。
いつもより少し大人っぽい雰囲気だった。
「お、おはよう」
悠斗は少し視線を逸らす。
「なにその反応?」
「いや……似合ってるなって」
一瞬止まる美雪。
そして次の瞬間。
「えっ」
顔が一気に赤くなる。
「そ、そういうの急に言わないで!」
「普通の感想だろ」
「普通じゃない!」
周囲の通行人が微笑ましそうに二人を見る。
「じゃ、行こっか!」
美雪が無理やり話を切り替えた。
「どこ行くんだ?」
「決めてない!」
「え?」
「でも楽しいとこ!」
相変わらずだった。
まず二人はショッピングモールへ向かった。
「これ見て!」
美雪がアクセサリーショップで指を指す。
「カフェで使えそうじゃない?」
「確かに」
「こっちの方がかわいい!」
「派手すぎだろ」
「えー!」
そのやり取りが楽しかった。
次にカフェへ入る。
「はい、あーん」
「やめろ」
「なんで!」
「恥ずかしい」
「今さら?」
美雪は笑っていた。
その笑顔を見るたびに。
悠斗の胸の奥が少しずつ揺れていた。
午後。
公園へ移動する。
ベンチに座る二人。
風が気持ちいい。
「楽しいね」
美雪が言う。
「そうだな」
「悠斗くんさ」
「ん?」
少しだけ沈黙。
「私といる時、どう思ってる?」
突然の質問だった。
「どうって……」
「正直に」
美雪は真剣な目だった。
悠斗は少し考える。
「楽しい」
「……それだけ?」
「あと」
言葉を探す。
「落ち着く」
美雪は少し目を丸くする。
そして小さく笑った。
「そっか」
「うん」
しばらく静かな時間。
でも空気は悪くなかった。
むしろ心地よかった。
夕方。
駅までの帰り道。
人通りが少し減っている。
「今日はありがとう」
美雪が言う。
「こっちこそ」
「また行きたいね」
「いつでもいいぞ」
美雪は少し立ち止まる。
そして。
「ねぇ」
「ん?」
少しだけ真剣な声。
「今日、楽しかった?」
「楽しかった」
即答だった。
美雪は少し安心したように笑う。
「よかった」
そして。
駅に着く。
別れの時間。
「じゃあね」
「おう」
美雪は一歩下がる。
でも。
「悠斗くん」
「ん?」
「またね」
その言葉は。
少しだけ特別だった。
その夜。
悠斗は部屋で考えていた。
美雪との時間。
笑顔。
距離。
自然体。
そして。
結奈の告白。
十年前の記憶。
「どうすればいいんだ……」
答えは出ない。
その時。
スマホが鳴る。
メッセージ。
結奈からだった。
『明日、少し話せる?』
短い言葉。
でも重い意味を感じた。
悠斗は画面を見つめる。
そして。
「……ああ」
返事を送った。
恋は。
ついに最終局面へ向かい始めていた――。




