表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/14

 §5 発見して、報告

 二人の反応は気もとめず新木は続ける。

「この宇宙には特異点は珍しくはないんだ。まさに恒星の数ほどあるから。ちなみにその数二千億。そのどこからでも敵が侵入してくる可能性がある。でもなにせ二千億だから正規軍だけではとても対応できないんだ。なので辺境は現地人に任せるという方針なんだ」

 新木は二人を見た。

「それでわが太陽系はわれわれが選ばれたわけだ」


「選ばれた? 現地人の中から」

「ああ、多分、ランダムでね」

 だってオレが選ばれたんだから、という愚痴は呑み込み、新木は続けた。

「選ばれた80億分の1、いや二人だから2か、天文学的に運が悪かったと諦めてくれ」


「私は運がいいと思っていたんだけどな」

 ルイはぼやいた。

「私の時は3400倍、この子はもっとすごくて8000倍はあったはず」

「何のオッズ?」

「萩坂のオーディションの倍率です」

「なるほど、君たちのかわいらしさの秘密はよく分かったよ」

「いえ、それほどでも」

 ルイは照れた。

「今はただの二等兵だけど」

「はあ、二等兵ですか」

 ルイはため息をついた。ついてない。


 アリサが顔を上げた。

「それで私たちは何をさせられるんですか?」

「索敵だよ」

「「さくてき?」」

 二人は同時に繰り返す。なじみのない言葉だ。

「索敵。敵を探すこと。特異点を見張っていて、敵が出てきたら司令部に報告する。それで任務は一応完了する」

「なるほど。発見して、報告するか」

 ルイは大きく肯いた。

「後は銀河帝国の正規軍がやってくるから任せればいいと」

「まあそうだね。所詮、われわれは現地徴用組だからね。無理はできない。それに索敵といっても、人間目で探しても追いつかない。ブラックホールだからね。船のマザーコンピュータがうまくやってくれる」

 ルイはほっとした。

「まあ、そうですよね。あたしたちが宇宙人と戦えるわけがないもんね」

 横を見るとアリサはぼんやりした顔をしている。


 一気にルイは気が楽になった。ライブ前に新しい振り入れがなくなった時みたいだ。

「どうせ敵がやってくる確率も宝くじぐらいですかね」

「宝くじ?」

 新木は手首のブレスレットを見た。 

「日本の宝くじで、一等が当たる確率は1000万分の1程度か。なるほど。それくらいかな。いやそれよりちょっと高いね。分からないけど。まあ、その程度だよ。でも万が一ってことがあるから、訓練は行う。生きるためだよ。だから自分たちのためだ。厳しいけど覚悟するように」

「いいですよ。訓練、結構です。レッスンだと思えば平気」

「あれ、そうなの。訓練は結構、厳しいよ」

「わたしたちは最初は入った時は、ずっと泣いてましたから」

「女工哀史みたいだね」

「なんですか、それ。昭和ですか」

 ルイが笑う。

「いや、どうかな」

 新木は困った顔をした。

「どっちにせよ訓練を入れて一年間勤務したら、卒業ですね」

「うん、まあ、卒業というか、除隊だけどね」

「一年か。ヤバいよね」

 ルイはアリサを見たが、反応がない。

 こんな時にもきっと何か別のことを考えているんだ。困った子だな、ルイはなんとなくおかしくなった。

「アイドルにとって、一年は長すぎるかい?」と新木。

「もちろん。それに海王星に一年いたと言っても誰も信じてくれませんよ」

 それは致命的なスキャンダルであることは新木にも想像がついた。

 しかしルイは(恐らくアリサも)そこまでリアルには感じていないのだろう。光の刷り込み効果のおかげだ。また実際はなんとかなることを新木は知っている。


「後から説明するけど、そう心配する必要はないんだよ」

 新木は穏やかな笑いを浮かべた。

「だから安心して欲しい。任期はきっかり一年。もちろん地球暦。悪魔なら現地時間の海王星暦を採用すればいいんだけど、そんなことはしない」

「えっ、それって何が大変なんですか?」

 ルイが聞くと、アリサがぼそぼそと言う。

「公転周期ですよ。惑星が太陽の周りを一周する時間が一年だから、地球よりうんと外側にある海王星は、一周するのにうんと時間が掛かるんですよ」

 目がなんとなく光をなくして黒くなっている。ルイはヤバいなと思った。

「そう平均で165年だね」

 新木は肯く。

 ルイは卒倒しそうになった。

「だからそんなことはしない。安心して欲しい。上の連中はわれわれを故意に騙すようなことはしない。フェアだよ」

「誘拐はしても、ですか?」とアリサ

「彼らは誘拐とは考えていないんだ。例が悪いけど、政府が税金を取るのを強盗とは言わないだろう」

「……ええ、まあ」とルイ。

「みたいな感覚。まあ、政府みたいなもんだからね。だから逆に嘘はつかないんだ」と新木。

「でも全部、正直に言ってくれるわけでもない。政府のように」とアリサ。

「はっは。シニカルだけど、その通りだね。上の連中は出したい情報だけ出す、これは世の常だよ。君たちの世界だってそうだろ」

「まあ、それはそうですね」

 アリサは渋々認めた。


早く訓練に入りたいのですが、アイドルたちの条件闘争はもうしばらく続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ