§3 まずお茶を一杯
中は意外に広く、四メートル四方ほどあった。
真ん中にシンプルなテーブルと椅子が置かれている。
新木は椅子に座ると、二人にも勧めた。
「君たちも、遠慮せず」
二人はおずおずと座った。
新木は二人の能力を見ることにした。
左手首の銀のブレスレットに触れると、彼女たちのそれぞれの頭の上にグラフが浮かんだ。
マザーコンピュータ(略してマザコン)のおかげだ。
まず身体の基礎能力。
筋力、持久力、瞬発力、敏捷性、柔軟性、平衡感覚、忍耐力などの各項目が1から10までの数値で表されている。
一般人の平均レベルが5だ。
彼女たちは3~6。平均が4.2だ。一般人の中でも少々下のレベルだ。
これなら文句はない。多少、劣っているが、そのための訓練とチューニングなのだ。
次に知的能力を見た。
こちらの方が項目が多い。
学習能力、問題解決能力、クリティカルシンキング、ロジカルシンキング、空間認識能力 発信力、傾聴力、柔軟性、状況把握力、規律性、回復力。リーダーシップ、タイムマネジメント、戦略策定能力。忍耐力、ストレス耐性、継続力、目標追随力、自己管理能力、ポジティブ思考など。
凸凹はあるが、こちらは両者ともに平均を上回る数値が表示された。
アリサの平均は7.5。空間認識能力に至っては8.5もあった。
訓練も受けていないのに、これはすごい。航行士にぴったりだ。
ルイも負けてはいない。平均7.2とアリサに遜色ない。
特に目標追随力は8.8だ。
いいぞ。新木は思った。射手に向いている。
新木は二人を見た。
「さて、君たちは太陽系海王星防衛基地の駐屯兵として徴兵された。今後一年間、私の指揮下にある。理不尽だと思うが仕方がない。諦めて欲しい」
二人とも忙しくまばたきをした。ぱちぱちと音がしそうだった。
本来ならパニックになるところだが、ホワイトライト効果で、納得こそしていないものの、話を聞く姿勢は崩していない。
「ここは哨戒艇だ。君たちの任務は、哨戒活動だだ」
「えっ、ここは船なんですか?」
ルイは足元を見た。アリサはとんと足踏みした。金属質の鈍い音がした。
「じゃあ下は海?」
「あ、だから海王星なのか?」
新木は首を力なく横に振った。
「いやいや、だから船じゃなくて宇宙船。海じゃなくて海王星軌道、あの外惑星のね」
彼女たちは顔を見合わせた。
事前説明と実際の仕事が違うことに気づいたバイトたちのように。
「じゃあここは宇宙空間ですか?」
ルイは、まさかそんなバカなという顔をした。
まあ仕方ないか、と新木は思った。
「ちょっと待ってね」
彼はテーブルの端を人差し指の第一関節で軽くノックをした。
するとテーブルが開き、トレイがせり出してきた。
トレイにはカップが三つにミルクと砂糖壺。クッキーの小皿まである。
コーヒーのいい匂いがした。
「コーヒーでよかったかな? とりあえず一服しようか」
二人はまた顔を見合わせた。
「さあ、どうぞ。遠慮なく」
ルイはカップを手に取った。ひと口飲む。美味しい。
アリサもため息をついている。
「ちょっと落ち着いたかな。じゃあ続けるよ。いろいろ疑問はあるだろうけど、まず聞いて欲しい。僕は」
新木はぽっちゃりとした親指を自分に向けた。
「僕は、新木次郎。四十五歳。ここの先任士官で君たちの指揮官。ここというのはつまり海王星軌道哨戒艇タフ423号とこの辺り、海王星付近の宇宙空間だね」
ルイはもうひと口コーヒーを飲んだ。
「海王星ですか、その外惑星の……」
彼女は心の中で怒鳴る。海王星ってどこだよ!
中年男は穏やかに微笑みんだ。
「次は君たちの話を聞かせてもらおうか。僕は何も知らないんだ」
ルイはアリサを見た。アリサは見返してくる。じゃあ私からか。
明日、明後日とお休みしますのでよろしくお願いします。
なんて書いてもどなたも読んでくれていない可能性も(大いに)あって、少し淋しいです ^^
さて、次週からは彼女たちの生活を通して、与えられた使命や能力や明かされてくる予定です。
哨戒艇の不思議さも少しずつ降り積もってきます。どうかご期待下さい。
感想をお待ちしております。きっと励みになりますので。m(__)m




