表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/13

 §8 重なり合う空間と相棒を命名する

「夕食の時間だ」

 二人は立ち上がって、それぞれのロッカーを開けた。

 ロッカーは幅は45㎝ほどで、二個が連結されている。

 開けると中は意外に広い。下は三段引出しになっている。

「あれ」

 ルイはロッカーから顔を出すと、首を傾げた。

「ですね」

 アリサも首を傾げている。

 ロッカーは内側がぐんと広がっている。

 それはいいのだが、問題は二つのロッカーはつながっていることだ。

 ルイとアリサはロッカーを開けたまま、手をお互いの方に伸ばしてみた。

「えっ、これって?」

 絶対に30センチは重なりあっているはずなのに、相手側に伸ばした手に当たるべき壁はない。

 ふーとアリサはため息を漏らした。

「これも考えても無駄ですね。地球じゃない証拠だと思うしかありません」

「それとも麻薬で幻覚を見せられているか」

「ですね。でも、さっき外を見たら、食堂もここと重なっているみたいでしたよ」

「えっ、そうなの」

 うわー、ルイは両手で自分のショードヘアをぐしゃぐしゃにした。

「考えても無駄だね」

「ですね」 


 ルイはブレスレットに聞いた。

「夕食は、どの服を着たらいいの?」

――一番前に出ているものを。

 ロッカーの中でハンガーが回転して、シンプルなオリーブ色の上下が前に出た。

 ジャージのようだが、もっと滑らかで伸縮性のある素材だ。

「また、ジャージか。『工事中』と変らないな」

「でもダサくないですよ」

「だね」

 二人は着替え始めた。


「おっとジッパーがない。どうするんだろ」

「着るつもりで手に取ると勝手に広がるみたいですよ。着たら勝手に閉じる。ブレスレットと同じ仕組みですね」

「なるほど、これは便利だわ」

 サイズはぴったりだった。着やすいし、着脱も楽だ。

「着心地はいいですね。適度に余裕もあるし。持って帰りたいくらいです。でもみんなびっくりしますよね」

「ま、そうだね」

 脱いだ服をハンガーに掛けると、自動的に奥の方に行く。

 あれ、っと思っていると、ブレスレットから声がする。

――ご安心を。クリーニングしておきます。

「なるほど、至れり尽くせりだ。ウチのも欲しい」

 後片付けが苦手なルイはしみじみとそう思った。


 突然、ルイはブレスレットに言う。

「君の名前はピムリンだ」

 ブレスレットは無言だが、戸惑っている気配が伝わってくる。

 ルイは身の回りのものに名前を付ける習慣がある。

 自転車は三郎、机にはチョムスキー。そして相棒のスマホはピムリンだった。


 ブレスレットはなんとなく慎重な口ぶりで言った。

――私には正式の名称があります。

「どうせ記号か数字だろ。それもわたしに理解できるように翻訳された」

――ええ。その通りです。

「でもさ、わたしの専用機なんだろ。だったらもっとわたし個人とのコミュニケーションを大事にしろよ。ね、だからピムリン。だったらもっと好きになるよ」

 しばらく沈黙が続いた。五秒ほど。電子の速度では永遠ともいえるほどの時間だ。

――了解しました。あなたが私をピムリンと呼ぶのを了解いたしました。

「よろしくね、ピムリン」

 ルイは笑いかけた。


 アリサは自分のブレスレットに言った。

「あなたはトウジよ。いい?」

 今度の返事は早かった。すでに覚悟を決めていたのだろう。

「はい、ありがとうございます。私はトウジで大丈夫です」


次回は夕食となかなか一日が終わりません。もう少しペースアップしたいと思っていますが、もたもたしています。どうかお許しを

明日、明後日とお休みします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ