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第四章 コミュ障陰キャぼっちにも青春はありますか? 第十八節

きっとこの時が最も輝きに満ちていた時間だったのだと


あなたはもう


気づけない

「遅かったですネ」

教室に入ってきた真凛を横目にメイリンちゃんは言った

「生徒指導の中野に捕まってただけなんだけど」

真凛は表情を変えないままでそう言った

真凛とメイリンちゃんの間に何とも言えない重い空気が流れる

「あのね真凛、これはその…」

「またやってるのか」

私の言葉に被せるように呆れたような表情で大倉くんが言う

大倉くんの言葉が余計に事態を面倒にするんじゃないかとヒヤヒヤしていると

「おーい真凛、入れないんだが」

「え、ああごめん」

そう言って真凛が扉の前から退くと後ろで待っていたらしい天城くんと綾乃が入ってきた

「遅くなってごめんね 日直の子の手伝いしてたら遅くなっちゃって」

「ううん 私も今来たところだから…」

目の前で手を合わせて謝罪した綾乃に私は言った

「朝霧はともともかくお前はどうしたんだ?」

「ああ、俺?」

大倉くんにそう聞かれた天城くんは困ったような顔をしながら続けた

「俺も生徒指導室でちょっとな」

「そうか」

そういうと大倉くんは再びベースを弾き始める


「ところで蓬ちゃん、そのギターって」

「あ、ああうん… つい最近買って…」

私のギターに気が付いたらしい綾乃が声をかける

「そうごく綺麗なギターだね…」

「ああ、うん ありがとう…」

ギターを褒められて正直嬉しかったけどコミュ症の私にはこんな時なんて言ったらいいか分からなかった

とりあえず顔が不自然ニヤけないようにするのに手一杯で…

「ほんとだ! ちょー綺麗じゃん!」

「うわっ って真凛!?」

後ろから真凛に声をかけられて勢いよく飛び去ってしまう

というか距離が近い…

「ごめんごめん てかいつの間に買ってたの?」

「ああ、うん その…ほんとつい最近… 偶然いいギターを見つけてそれで…」

ほんとは昨日学校をサボって買いましたなんて言えなかった

けどまるきり嘘を吐くこともできかなかった私は適当に誤魔化す

「そうなんだ~ アタシも自分のキーボード持ってこようかなー」

「さすがに重くて無理じゃないか?」

「ジョーダンジョーダン、さすがにに持って来れるわけないって」

天城くんのツッコミに笑いながら真凛は言った


「で、なんでアンタがここにいるの?」

再び表情をどこか硬くした真凛はメイリンちゃんにそう告げる

「居ては割るかったデスか?」

「別に… けど一応ウチの部員じゃないしなんかあっても困るからきいただけ」

真凛の言い方にはどこかトゲがあったけど言ってることは理解できた

一応、音楽室にある備品は音楽部の備品だし先輩たちが置きっぱなしにしている私物もある 

万が一、紛失や破損のトラブルがあってはいけないから本来なら部員以外の立ち入りは控えるのが得策だ

それに今は梅田先輩の一件で二年生の先輩たちは部活に来ていないし…

真凛の言い分も理解している様子のメイリンちゃんはやれやれといった感じでため息を吐きながら鞄から一枚の紙を取り出した

「二週間後、週末にこの辺りで夏祭りがあるらしいデスね」

「まさかそれに誘いに来たの?」

「どうせ蓬だけでしょ」

意外そうな表所を見せる綾乃に真凛がそう言うとメイリンちゃんは違いますヨと言って続けた

「誘ってるのはここにいる全員デス 最もこのお祭りの二日目に行なわれる野外ステージの出演者としてですガ」


「野外ステージ…」

メイリンちゃんが告げたその言葉を思わず反復する

夏祭りの野外ステージともなれば当然、学校の外でのライブになる

まだ経験の浅い私達が出るにはハードルが高かった

「俺は別に出てもいいと思うけどな」

真っ先にそう言ったのは天城くんだった

いつもみたいに何か考えがあって…そんな感じではなかった

ただ本心からこのライブに参加しようと思っているみたいなそんな感じだ

「私も…でてみたいかな…」

綾乃の答えも肯定的だ

大倉くんはどちらでも良いとだけ言うとすぐにまた練習を再開した

「あなたはどうナンです?」

メイリンちゃんが真凛に問いかける

この間倒れた後からまともに練習に参加できていなかった真凛にとってこのライブ事態はハードルが高いはずだ

真凛もどこか考え込むような感じで黙っていたけど答えはすぐに出た

「アタシも出れるなら参加する」

「そう、デスか」

真凛の答えを聞いたメイリンちゃんはどこか嬉しそうだった


そんなこんなで話が纏まりかけたタイミングで天城くんは言う

「あとは蚊帳ノさんがどうかだけど…どうしたい?」

「私は…」

「バンドリーダーは蚊帳ノさんだし最終的な決定は蚊帳ノさんがして良いと思う ここにはそれに文句言う人はいないだろうしね」

私の意思をフォローしてくれる天城くんの言葉はありがたかった

けど私の意思は変わらない

変わらないんだけど…


「私も…ライブには出たい…」

「なら、決まり…」

嬉しそうにはしゃごうとするメイリンちゃんを制止しながら私は続けた

「ライブには出たいんだけど… ただ…」

「ただ…?」

綾乃が不安そうにこちらを見つめてくる

これから言おうとしてる言葉を反芻して妙なプレッシャーを感じながら言葉にした

「その… 不安というか気になることがあって…」

「演奏のことならなんとかするよ!」

すかさず真凛が言った

「あっ…その… 練習とか技術の問題じゃなくてね…」

「じゃあ、人前で弾くのが緊張するとか?」

天城くんに聞かれたものの首を振って否定する

「あ、えと…そうでもなくて… その…こんなこと言ううのもすごく馬鹿バカしい話なんだけどね…」

そう、これは技術でも精神的な問題でもなかった

いや、技術かと言われたそうだろうし精神的な部分もある

最も私を含めこの場にいる全員が分かっていることだし心配する必要も本来ないはずのことなんだけど…

なんとなく悪い予感がしたんだ…

そして最悪なことに私の感じる悪い予感はそこそこの確率で命中するから…


「来週、期末テストだけど大丈夫かなって…」


その言葉を聞いた途端静かな沈黙が流れた


そして…


一言も発することなくこの場にいた中の三人の顔が青ざめていくのを私は見てしまった


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