第四章 コミュ障陰キャぼっちにも青春はありますか? 第十六節
日常は再起する
翌日、私は学校に向かった
昨日はあの後…探偵を名乗る女性と別れた後で雛鳥さんと合流してそのまま帰路に就いた
恐る恐る家に帰ると特に学校をサボったことについて何も言われなかったしギターのことも怒られるどころかやっと買ったかと安心されてしまった
まるで始めからこうなることが決まってたみたいな不思議な感覚…
けど朝起きるとそれはいつも通りの日常に戻っていて普段と違うのは学校に行くときにギターを持って行くことぐらいだった
いつもより重く感じる教室の扉を開いて足を踏み入れる
昨日サボったというだけなのにまるで処刑台に上がるみたいな気分だった
いつも通り無言で気配を隠しながら入る
「おはよ~って蓬!?」
背中に浴びた声に驚いて振り返るとそこにはクラスメートの小林真凛が立っていた
「あ、えと… おはようございます……」
昨日、学校に学校に来なかったことをツッコまれるんじゃないかと身構える
すると真凛は心配そうな顔で言った
「昨日、具合悪かったらしいけど大丈夫?」
「へ?」
何のことだろう
私は昨日、学校に欠席の連絡を入れていなかった
だからてっきり無断欠席になっていたのかと思っていたのに…
「蓬?」
「あ、ああううん… 心配かけてごめん… 体調は大丈夫だから…」
「そっか ならよかった」
とりあえずここは話を合わせることにした
真凛は私が何ともないことを確認するとそのまま自分の席に向かった
私も自分の席について鞄から荷物を取り出す
「蓬ちゃん、おはよ」
「あ、おはよう…」
私の前の席に立った綾乃が声をかけてくれた
綾乃とはここ最近会っていなかったから随分と久しぶりな感じだ
「蓬ちゃんも昨日はお休みだったの?」
「あ、うん… ちょっと体調が…」
綾乃に堂々と嘘をつくのは心が痛むものの真凛の話に合わせてしまった以上、この件は雛鳥さん以外に嘘をつかなければならないのだった
「綾乃も昨日は学校休んだの?」
「うん… ちょっと家の用事で…」
どこか俯きながら言った彼女の様子が気になったけどちょうどそのタイミングで朝のHRを告げる予鈴が鳴った
それから放課後までの間は特に昨日のことで聞かれるわけもなくいつも通りの一日だった
サボったことがバレていないようで嬉しい半面、後ろめたさがあったのも事実だけど…
「あ、いたいた蓬ちゃん」
部活に行くために音楽室に向かう途中、雛鳥さんに声をかけられた
「雛鳥さん?」
「いや~ やっと見つけたよ~」
「探してたの?」
「まぁね」
私の問いかけに答えながら周りを気にしながら言った
「昨日のことについて伝えるの忘れててさ…」
「あ、もしかして昨日私が体調不良で休んだことになってた…」
「そうそう!それそれ!」
なんとなく察しはついていたけどやはり雛鳥さんの仕業?おかげ?だったらしい
「念のためボクのほうで欠席するっていっておいたんだよね~ 中々言うタイミングなかったしあの後ボクも色々会って連絡できなかったからさ… ごめんね」
「あ、ううん おかげで何も言われなかったし… ありがとう」
結局、嘘をついたことに変わりはなかったけど誤魔化せるならそうするに越したことはなかった
「それに雛鳥さんも私のためにしてくれたんだろうし…」
「まぁ蓬ちゃんを唆したのはボクだからね~」
笑いながら言った彼女は床に置いた鞄を持ちながら私と向き合った
「蓬ちゃんはこれから部活?」
「あ、うん…」
「そっか…」
雛鳥さんは僅かに前に歩み出るとさっきまでとは違う真剣な表情で囁いた
「もしもボクのいないところで怪しい人に絡まれても戦っちゃダメだよ」
「えっ…」
不審者に遭遇しても私には逃げる以外にできることはない
抵抗してもましてや立ち向かう力なんてあるはずもなくて…
「ま、キミのことだから大丈夫だろうけどさ」
再びいつも通りの表情に戻った雛鳥さんはそういうと私とは反対の方向に進んで行った
「……あれ?」
雛鳥さんが向かった先、そこにあるのが使われていない教室と生徒会室しかないことにかすかに違和感を感じながら時間に遅れないように音楽室に向かい歩き始めた




