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第四章 コミュ障陰キャぼっちにも青春はありますか? 第十五節

好きの反対は無関心だ


なぜなら好きと嫌い、愛と憎悪をともに両立する感情なのだから


故に私はきみのことを…

「もし何かありましたらいつでもいらして下さい」

「あ、はい… ありがとうございます」

受け取ったギターケースを肩にかけてお店を出た

ギターを買ったという自覚がイマイチ持てなくてかすかに放心状態でいると雛鳥さんがこちらを見つめながら言った

「蓬ちゃんごめん! ちょっと用事ができたから少しだけ一人で動いてもいいかな?」

「あ、うん…」

「ほんとごめんね… 三十分もしたら戻って来るからさ」

そう言って雛鳥さんは足早に来た道を戻って行った

一人取り残された私はギターを持ったままどうすることも出来なくて…

すぐそばにあったベンチに座った


「はぁ」

ベンチに座りながら大きなため息を吐いた

改めて考えたらすごい状況だ

学校をサボってギターを買って…雛鳥さんにも取り残されて…

これから一体どうしよう…

家に帰ってから家族になんて説明するべきかそんなことを考えていた時だった

「もしもし」

「……」

その声はまるでどこかに電話をかけるみたいな遠くに向かって発しているみたいな声だった

「もしもし…お嬢さん?」

「はぇ…」

声のしたほうを見上げるとそこには長身の女性が立っていた

もうすぐ初夏なのに長いコートみたいな服を着ている

どこかで見たことがあるような形の帽子をかぶったその人の顔はとても整っていて美しかった

「あ、えと… 私ですか?」

「ああ、君のことだとも」

間違いないといった風に頷きながらその人は私の横に腰を降ろした


「浮かない顔だがどうかしたのかな?」

「いえ…」

初対面なうえに言葉の意図が読めないその人を警戒する

いくら女性とはいえどこか胡散臭いその雰囲気は怪しすぎた

「ふーむ ああ、さては学校をサボったって所かな」

「っ…」

昔の刑事ドラマみたいに額に手を当て考える仕草をした後でその人は言った

その言葉があまりにも的を射ていたので私も思わず反応してしまった

「どうして、そう…思ったんですか?」

その問いかけに待ってましたと言わんばかりにその人は答えた

「なに、初歩的な推理だよa…ワトソン君」

「誰がワトソンなんですか…」

その無駄に自信満々な表情に思わずツッコんでしまった


けれど彼女はそんなことも気にしない様子で続けた

「まあ、聞きたまえ 君のその制服は桜水高校のものだろうそして桜水は今日は普通に授業があるはずだだから…」

「具合が悪くなって早退しただけかもですよ」

「うっ… だが病人がギターを持ち歩くわけが…」

「病人でもギターを持ち歩かないといけない事情があるかもでは? 例えば通学の途中で具合が悪くなったとか…それで家にひき返す途中でここで休んでいたのかも」

自信満々に語ったにしてはかなり無理やりな推理だった

まあ学校サボったことは当たっていたけどこのまま認めるのも癪だからちょっとした意趣返しだ

それを聞いた彼女は目元を押さえながら言った

「やはり君はいつもそうだ…」


その言葉の意味がよくわからないままこれ以上付き合うのも面倒だなと席を立とうとした時だった

「歌はいいよね… 心が洗われる 人類の生み出した唯一の…」

「急になんですか?」

どこかで聞いたことがあるような台詞を突然語られて反射的にツッコんでしまった

本来ならこんなことしないのにまるでずっと昔からやっていた気分だ

「うんうん やはり君はキミだったんだね」

「だからなにを…」

「今まで続いた物語は今日で終わる 明日からはいつも通りの日常だ」

さっきまでのふざけた態度から一変して彼女は言った

「予言…ですか?」

「はは、私はかの占星術師とは違うからね…初歩的な推理だよ」

立ち上がった彼女は私の方に振り向きながら続けた

それを聞いた私は咄嗟に問いた

「あなたは…一体」

「私かい?」

その言葉に頷くと同時に彼女は立ち止まって言った


「私は夜鷹… 秋月夜鷹あきづきよだか、探偵さ」


過ぎ去るその背中には天秤の星紋せいもんが刻まれていた



15.5 騎士と魔女


帰路に就く途中で男と出会った

いつにもまして不機嫌そうな男だ

「それで、どうだった?」

「彼女は山羊じゃないよ 少なくとも私の目から見たらそうだった」

「信用できない」

男は躊躇なく剣を抜くとこちらの首元にそれを当てた

「お前も分かっているだろう 協会にとってあの魔女は必要だ」

「分かっているとも そして協会の意思に逆らうことがテンプルの意思に逆らうことも」

「ならばなぜ…」

男も分かっているのだろう

彼女を協会に引き渡せば彼女ではなくなる

テンプルの魔女として協会の最高戦力として迎え入れられることを

それがどれほど不幸なことなのかを

でも逆らえないのだ

それに逆らうことはかつて無実の罪に問われ、主への敬神と信仰を抱いたまま焼かれたあの騎士たちを愚弄することになってしまうから


「だから私が代わりになろう 忌み名を持たないこの私が」

剣に向かい前に出る

あと少しで首に当たる寸前で男は…騎士は剣を引いた

「好きにしろ…解明の魔女」

「ああ、好きにさせてもらうとも 最も…彼女が最初の過ちにたどり着いた後でね」


探偵を騙る魔女は静かにそう言った



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