第四章 コミュ障陰キャぼっちにも青春はありますか? 第十三節
求めるのは居場所か死に場所か?
「呪われてる…ですか?」
何の変哲もないただのギターを見つめて言った
確かに他のギターよりも埃を被っていてあまり触られていないようには思える
けど他のギターと比べて違うところはそれぐらいだった
私の疑問を汲み取るかのように店長さんはそのギターにそっと手をかけて言った
「呪い…と言ったらこの子に悪い気もしますがこのギターの持ち主はそれはそれは大切に扱っていらっしゃったんですよ」
穏やかにまるで過去を懐かしむように話を続けた
「正直に言えばこのギターは特に高価でも特別でもない…どこにでもあるギターです しかし以前の持ち主はまるで家族のように…このギターに人と同じ魂が宿っているかのように扱っていました」
そう語られた昔話を聞いて私はふと疑問に思ってしまう
「どうして…その人は手放したんですか?」
なぜ、家族同然に扱っていたギターを手放してしまったのか
語られた話からはその理由が想像できなかった
勝手な想像で考えられるのは音楽を辞めてしまったのかそれとも…
「亡くなってしまったんですよ」
「……………」
ありえない話ではなかった
むしろ自然と納得がいった
人は生きているからにはいつか死んでしまう
それは変えられようのないこの世界の法則の一つだ
けれど物は違う
大切にすれば悠久の時を生きることができる
だとしたら大切に扱っていたものよりも先にその持ち主がいなくなってしまうのもしかたのないことなのかもしれない
もしかしたら私も…
「大丈夫ですか?」
「あ、えと… はい…」
こちらを心配そうに見つめる店長さんに言った
昔から余計なことを考えると思考が深くにまで潜ってしまうことがあった
たぶん今回もそれだろう
そんな私の意識を戻してくれた店長さんは手に持ったギターを軽く弾いて見せた
軽く弾いただけなのにすごく綺麗な音が響いた
しかし…
揺れた弦が完全に停止するよりも先に耳障りで突発的な音と共にその形を崩した
驚いてギターを見ると上から四番目の弦が完全に切れてしまっていた
「大丈夫ですか!?」
「ええ、まあ ご心配なさらず」
そう言ってギターのブリッジ側から抜け落ちた弦を拾いながら言った
「ご覧の通りこのギターは特定の人で無ければ弾くことすら拒むのですよ」
「それが…呪い」
目の前の現象を目の当たりにしてもまだ信じられなかった
埃を被っていたギターだもしかしたら弦が劣化して切れやすくなっていたのかもしれない
あるいはこのギターを使うたびにたまたま良くないことが起きただけかも…
そんな言葉を口にしようとしてできなかった
上手くは言えないけどまるで
「迷子……」
「蓬ちゃん?」
気づかずに呟いたその言葉を聞き逃さなかった雛鳥さんは不思議そうに聞き返した
「あ、えと…なんとなくその子がそんな風に見えて… 突然持ち主がいなくなってどこかに置いて行かれた…みたいな?」
自分でもなにを言っているのかよくわからなかった
けど確かに私の目にはそんな風に見えたんだ
まるで誰かを探しているみたいに
「でしたら弾いて見ますか?」




