第四章 コミュ障陰キャぼっちにも青春はありますか? 第十節
鳥籠の外にあるのは天か地か…
次々と流れるような景色を横目に私と雛鳥さんは電車に揺られていた…
もちろん、今日は平日だしなんなら月曜日だ
当然のように学校があってしかも授業はとっくに始まっている…
「なんかさ、学校サボるなんて特別な感じしない?」
「そう… ですね…(笑)」
雛鳥さんの言葉にぎこちない笑顔と当たり障りのない返事で応える
しかし顔では笑っていても内心は今すぐにでも電車を降りたい気分だった
「あの…雛鳥さん?」
「ん?」
「これってどこまで行くんです?」
終点の駅が今まで聞いたこともないような地名の電車に乗せられて恐る恐る彼女に聞いた
雛鳥さんはそんな私の意図を汲んでか汲まずか自分の口元に人差し指を当てながら言った
「うーん 秘密かな」
その仕草に思わずドキッとしてしまう
けれど結局行先を教えてもらえなかったせいで不安は募る一方だった
それから何駅も知らない駅を通り過ぎて行って一時間ぐらい経った頃に雛鳥さんは言った
「それじゃ次の駅で降りようか」
「あ、はい…」
それまで雑談はしていたけどあまりに急な展開に正直驚いた
もっともさっきまで話していた内容も碌に頭に入ってなかったんだけど…
駅から出るとそこは都会だった
出口がいくつもあるような大きな駅でまるで迷路みたいな…
「ここって…」
改めて駅の名前を確認すると私で知ってる名前だったことに気が付く
さっきまで緊張していたせいでまるで気が付かなかっただからかな…
「さてと… どう?学校サボった気分は」
「うっ…」
「なーんて、じょーだんだよ 学校サボってるのはボクも同じだしさ」
いじわるそうな笑みを浮かべながら雛鳥さんは言った
「でも…元はといえば雛鳥さんが連れてきたんじゃ…」
「そういえばそうだったね ま、一人で来る気分じゃなかったからさー」
どうやら私は雛鳥さんの気分で学校をサボったらしい
そう考えると少しだけ気持ちは楽になった
「それで…これからどこまで行くの?」
「うーん 特に決めてないんだよねー」
軽く伸びをしながら雛鳥さんは続ける
「中学の頃から仮病とか使ってこんな感じでサボってたんだけどさ、高校生にもなると行ける範囲もできることも広がるからね…」
「なにをするか迷ってるってこと?」
「どっちかって言えば分からなくなってる…かな?」
私の問いかけに首を振った雛鳥さんはどこか寂しそうな表情だった
「蓬ちゃんは行きたいとことかある?」
「えっと… 特には…」
さっきまでちゃんと帰れるかばかりを気にしていたからか行先が思いつかなかった
とりあえず駅を降りる時に確認したお財布の中身は問題ないけど余裕があるわけでもないし…
スマホの使い方すら慣れてなくて行先を調べることすらままならなかった
「そっかー あ、そうだちょっと行きたいとこできたから付き合ってくれる?」
「あ、うん…」
それから私はしばらくの間、街中を歩き進める雛鳥さんについて行った
「あの…これってどこに向かってるの?」
「うーんと僕の行きつけのお店かな?」
振り返ることもなく雛鳥さんは前を向いたまま話している
普段から人の顔を見て反すことができないくせになぜか不安になってくる
雛鳥さんの感情とか考えていることが分からない
なんとなく雛鳥さんに言われるがままついて来たけど大丈夫かな…
さっきから会話が一方的だし一々行先ばかり聞いてウザがられてないかな…
スマホの充電も昨日、寝る前にし忘れたせいでもうないけど学校から連絡がきてたりしないかな…
そんなことを頭の中で考えていたらいつの間にか薄暗い路地裏に入っていた
「雛鳥さん? さっきまで私達、大通りのほう歩いてなかった?」
「ん? ああ、そだね 秘密の抜け道…みたいなのを使っただけだよ」
雛鳥さんはどこか気まずそうにそう言った
たぶん余計なことばかり考えていたせいでまともに周りを観ていなかったからだろう
でも雛鳥さんの行きつけのお店がこんなところにあるとは思えないし…
「もしかして、迷った?」
「ううん 大丈夫だよ ただ蓬ちゃんが思ったより勘がいいなっておもっただけ」
「えっと…」
その言葉の意味がよくわからなくてきょとんとしていると雛鳥さんは気にしなくていいよと言ってから目の前の建物を指さした
「ここが目的地だよ」
「ここって…」
古びた廃墟みたいな建物には和田楽器と書かれていた




