第四章 コミュ障陰キャぼっちにも青春はありますか? 第七節
雷鳴と騎士
翌日、私はお母さんに連れらて祖父の家に来ていた
ちくたくと壁にかけられた時計からは秒針の進む音が聞こえている
無駄に広い家の中は気持ちの悪いほど静かで聞こえてくる物音はそれぐらいだった
「…」
「…ねぇ、若菜…」
「…」
部屋の隅でスマホをいじる弟に声をかけたけどあっさりと無視された
「…聞いてる?」
「…」
再び声をかけても返事はない
別にイヤホンをしてるわけでもないし時々、こっちを見てるから聞こえてはいるんだろうけど…
あまりしつこいと怒られそうだったから私はそれ以上、声をかけないことにした
ちくたくちくたくと一度気になってしまった音はますますその音が気になってしまう
気を紛らわせようとスマホを開くけど何かをする気になれなくてそのまま画面を暗くした
ふと綾乃や真凛のことが気になってもう一度スマホに目を向ける
けれど通知は他愛もない広告ばかりで誰からも連絡はなかった
先輩のお葬式が終わってから音楽部全体の空気は最悪だった
先輩たちの関係が良くなるわけもなくギスギスとした空気のまま昨日は解散した
曜日ごとに音楽室での練習は学年毎に振り分けられていたけど二年生の使用予定は全て白紙になって代わりに私たち一年生が使って良いことになった
本当は男子の先輩もいたんだけど二人とも昨日の時点で退部したらしい
具体的な理由は分からなかったけどたぶん、梅田先輩のことが原因だと思う
結局、今の音楽部からは二年生全員が退部もしくは活動停止となり残された私達だけで活動することになったのだ
これからの活動やバンドとしての動きについて話し会いたかったけどそんな雰囲気出もなく、更にはこんな所にまで呼び出されてしまった
「はぁ…」
改めて今の状況を理解すると無為意識にため息がでた
せめてこんなところに呼び出されなければ綾乃や真凛とこれからのことについて相談できたのに…
まったくタイミングが悪いというかなんというか
一人で頭を抱えているとゆっくりと足音が迫ってくるのが分かった
足音は襖の前で止まると襖を開いた
「おお、来ていたのか」
「お久しぶりです お祖父様」
私がそう答えるとその人は部屋の奥へと入ってきた
「ひさしぶりだな二人とも」
「お祖父様もお変わりないようでなによりです」
もはや定型文になったような言葉を口にする
その間も若菜はまるで他人事のように口を開かなかった
「ああ、二人とも元気そうでなによりだ 若菜はまた大きくなったな」
「別に、大して変わってませんよ」
やっと口を開いた若菜は不機嫌そうに言った
けれどそんなこと気が付かないみたいな様子で続けた
「しかし若菜は楓さんにそっくりだな」
「…」
お母さんに似ていると言われた若菜は何も言わずに黙っていた
私が咄嗟に口を開こうとすると
「しかし蓬は… いったい誰に似たのか…」
今まで何度も聞いてきた同じ言葉が今日もまた私の心を抉った
「旦那様、それは…」
いつも通り付き人の柊さんがそれ以上の言葉を止めてくれた
けれど私はいつも通り大丈夫ですとしか言えなかった
「お祖父様のおっしゃることは事実ですので…」
「しかし…」
心配そうにしている柊さん、彼女の優しさを無駄にしている見たいで避けに胸が苦しい
そんな私を横目にお祖父様は続ける
「蓬もあんな出来損ないと似ているなんて言われたくもないだろうよ」
「……」
「俺にだって半分は同じ血が流れてる」
それまで黙っていた若菜が珍しく声を上げた
その反応が意外だったのかお祖父様は少しだけ驚いているみたいだった
かくいう私も今までにない若菜の反応に言葉が出ないでいる
僅かに流れる沈黙を消そうと頭を悩ませていると
再び襖が開いた
今度はさっきとは違って乱雑に
音を立てながら勢いよく開いた隙間からその人は入ってきた
そして…
「ん? 蓬、若菜… 来てたのか…」
寝巻姿の父はそう口にした




