第四章 コミュ障陰キャぼっちにも青春はありますか? 第三節
肉体は灰となり魂は無に還る
そして精神は果て無く彷徨う
「ほどなく、お別れです」
黒服に身を包んだ職員の言葉と共に棺は火葬炉へと運ばれて行った
亡くなった先輩の家族は最後まで棺から離れようとはせず、見かねた親たちから半ば無理やりに引き離されていた
会場内に響き渡る泣き声と叫び声はいつまでも残響のように私の頭から消えてはくれなかった
「さっきは巻き込んで悪かったな」
葬儀場に戻った後で竹本先輩に声をかけられた
「あ、いえ… その、私こそ何もできなくて… すみません」
「お前が謝ることじゃない そもそもあれは松子に非があることだ」
先輩はそう言って私の肩に手を置いた
「とにかく、蚊帳ノが気にすることじゃない」
「はい…」
二人になにがあったのか私が聞く間もなく先輩は蓮見先輩のほうに向かっていった
どのみち、私からそんなこと聞けるわけもなかったけど少しだけ気になってしまった
「蓬、大丈夫だった?」
唐突に声をかけられ、振り返るとそこには同じバンドメンバーの小林真凛が立っていた
「あっ… うん… 心配かけてごめん」
「そんなの、気にしなくていいけどさ… 花音先輩のことで蓬も落ち込んでるのかなって」
心配そうに見つめてくる真凛に向かって僅かに作り笑いを浮かべながら
「大丈夫だよ 確かに先輩のことは悲しいけど、そのせいで倒れたわけじゃないから」
「そっか… でもヤバかったらちゃんと言ってよ」
「うん…」
真凛とはそこで一度別れて私は会場の隅にある椅子に座っていた
綾乃や大倉くん、天城くんにも戻って来たことを伝えたかったけど場内には思ったよりも人がいて見つけることができなかった
「先輩ってたくさん友達がいたんだ…」
ふとそう呟いた
会場の中にいる人たちはほとんどが同じ制服や違う学校の制服を着ている人たちばかりで自分と同じ高校生が多いことは一目で分かった
当然のことだけど来ている誰もが泣いている
そんなこと理由なんて考えるまでもなかった
ついこの間まで連絡を取っていた一緒に過ごしていた人が突然居なくなって、もう二度と会えなくなったんだ
それを悲しまない人なんていないしここで泣かないことのほうがおかしいんだ
私は先輩との関係はそこまで長くないしほんの数か月の付き合いでしかなかったけどそれでも先輩には優しくしてもらって…それで…
たとえどれだけ記憶を辿っても悲しみはあっても涙は流れなかった
泣きたかったわけではない、けど泣けなかったことが私が今ここにいることの間違いを表しているみたいで…
「私って、最低だ…」
ただ自分を責めることでしか償うことができなかった
「随分とお疲れのようですね」
耳元で聞こえた声を探すとすぐ横に黒服の男の人が立っていた
「あ、えと… たしか」
「喪黒です こうしてお会いするのは二度目でしょうか?」
以前会った時と同じ貼り付けたような笑みを浮かべてその人は言った
「あ、えと…たしか雛鳥さんの知り合い…」
「ええ、そうです 以前お会いした時には言わなかったのですが私、こちらの職員でして」
「そう…なんですね」
思い消すとこの人からは菊やユリの花の匂いとかすかにお線香みたいな匂いがしていた気がする
まさかこんなところで再開するなんて…
偶然にしては出来過ぎたような再開に戸惑いつつもやっぱりこの人はどこか苦手な気がした
妙に距離感が近いというか… でも傍から見ればそうでもないんだろうとも思う
とても不思議で妙な感覚だ
「何か悩みがあるならお聞きしますよ」
「あ、いえ… 少し疲れてしまっただけなので…」
私が席を立とうとしたその時だった
「田村松子、彼女のことが気になりますか?」
「っ…」
その言葉に不覚にも私は足を止めてしまった
「どうして…」
「さぁ、どうしてでしょうね ただ私は彼女の、彼女たちの過去については少しだけ知っています」
「先輩たちの過去…」
振り返ることはせずでもその場から立ち去ることもできないまま私は呟いた
「話すにしてもあなたには何も求めませんよ」
まるで私の思考を読んだかのように続ける
そして、僅かに一息ついてから彼は言った
「PRIVATELILLIE」
かつて存在したあるバンドの名前を




