殺愛
花は散る
「はぁ、はぁ、はぁ」
浅い息と共に女は薄暗い廃墟を歩いた
一歩、また一歩と歩くその足はまるで足枷でも付けられたかのように重く踏み出すたびに体力を奪っていく
「なんで、私が…こんな、目に…」
思い返せば全ての元凶はあの女だった
不吉な笑みを浮かべて躊躇なくこちらの足を切り開いた女
殺すことよりも傷つけることを優先したようなその嗜虐的な冷笑は思い返すだけで全身の魔力が逆流しそうになるほど恐ろしかった
命からがら逃げ伸びてなんとか呼吸を整えたというのに…
すぐにでも戻ってあの女をこの手で殺してやりたいと思うのに…
それなのに…
「ハイ・D・ランシアっ…」
半年前、あの人が殺したはずの雨の魔女、その意思を継ぐ者が生きていたんて…
テンプルの魔女、あの騎士たちに影響された愚かで低俗な異端児の集まりはいつも邪魔ばかりしてくる
自らの名前にDなどという不吉な文字を入れ、自分たちがまるで神の守護者であるかのようにふるまう
違う、奴らは神の守護者なんかじゃない
自らの手で神が魔術を魔法を生み出した超常的にして画一的な存在を暴こうとしているのだから
そう、本当は神が××××であることを証明しようとしている
そんなこと、協会が許すはずはない
そう、あの時のようにきっと今回も…
どこからかピアノの音が聞こえた
どこかで聞いた悲しい旋律
「え……?」
鈍い感覚と胸から突然生えた銀色のナイフ
それは確かに彼女の魔力基幹を貫いていて…
「どう…して…」
「あなたの役目は終わったの二十二番、吸血鬼には吸血鬼らしい終わり方があるのよ」
そう言ってゆっくりと抜かれたナイフと共にその女は絶命した
それを見た女はまるで汚物を見るような目で見下ろして言った
「これが吸血姫を裏切ろうとした者の末路ですか」
零れ落ちた桜の花弁が涙のように地に落ちた




