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幕間 テンプルの魔女達

その意思は今もまだ消えることなく


ただ真理を護るべくしてそこに在る


あともう数センチ背が高ければ…そんな風に感じたのはこれで二度目だった

その男の顔面に向けて伸ばした拳は僅かに届かず

代わりに男の胸を突いた


「……言い訳はしません」

「言い訳? ふざけるのも大概にしろよ火葬屋…」

「…これほどまでの被害を出したことは素直に謝罪します」

その男、火葬屋室長である黒崎零時くろさきれいじは言った

そのあっさりとした態度は逆に雛鳥の怒りを強くするだけだった

「仲間内でアイツの術式にハマるなんていったいどういうつもり?」

「彼らに非はありませんよ 全ては判断を間違えた私の責任です」

「そうやって… シアの時みたいにボク達には何も共有しないってこと?」


今度は術式を編んだ状態で殴ろうとしたその時だった

「そう熱くならずお嬢さん」

耳元を掠った声の主にその手は止められた

「っ痛… ただのJKかと思ったら普通に強いじゃないか」

「……」

怒りに任せていたとはいえかなり強力な術式だったはずだ

それを片手でそれもほとんど無傷で押さえているとこらから見ても相当な手練れであることは一瞬で理解できた

「…あなたは?」

「ああ、申し遅れたね 私のことは『探偵』と言ったら分かりがいいかな?」

一歩下がり女は言った

背が高く妖艶で自分とは正反対な立ち姿だった、もっとも感じたのはそれぐらいで女の言った探偵というワードには特に聞き覚えがなかった

「どうやら私の正体にピンときていないらしい… それと私と自分の容姿を比べて卑下したね、まあ心配することはないさ女は胸が全てじゃないし君のように華奢で可憐な少女を好む男性はことのほか多い… 特にこの国ではね」

「それってボクがロリコン好みの見た目ってこと?」

勝手に思考を読まれたことに苛立ちつつ女を睨みながら言った

「まあそうなるかな? あとはまあ一人称は私、もしくは自分の名前のほうがウケがいいだろう、ボクだと恋愛対象として見られるには少し不向きな気がするからね」

「余計なお世話… こういうのが好きな人もわりと多いと思うけど?」

最もそう言った趣向の持ち主は大体がオタクかロリコンな気がするけどそこは言わないでおいた

「確かに… 昨今の価値観の変化の上では不適切だったね謝罪しよう」

「そんなことよりあなたは一体どこの誰?」

詩草の問いかけに女はさらに一歩下がると深く一礼してから言った


「私は探偵…そして君と同じ魔術協会直下第一階梯ワルプルギスに所属する魔女… その中でも十二に分類されしホロスコープス 天秤座、解明の魔女…」

「ホロスコープか…」

想像していた通りの名前が出てきて納得した

けれど探偵の二つ名も解明の魔女の名前も聞き覚えがなかった

女は顔をあげると微笑みながら言った

「星名はひとまず省略させていただき今は秋月夜鷹あきづきよだかとして知って頂きたい」

「秋月夜鷹…」

その名前を反芻してもやはりピンとこなかった

そもそもホロスコープなのかさえ怪しい…


「それはそうとして…やはりこのようなことが発生した以上、山羊座の捜査は進めなければならないな」

「あの人の生まれ変わりですか…」

真剣な面持ちで呟いた秋月に黒崎が同調する

「あの人の生まれ変わり…それさえ見つかれば…」

二人の話の内容は理解できているけれどここで自分が口をはさめば彼女を巻き込んでしまうことは明白だった

「ふむ…どうやら君はこの件について心当たりがあるみたいだね」

「っ…」

探偵を名乗る女の前ではそれは無意味な抵抗でしかなかった


「ミコト」

「はい、先生」

秋月の呼び出しに応じたのは自分と同じぐらいの年頃の少女だった

「潜入調査を頼みたい『演者』(アクター)は画家で頼んだよ」

「かしこまりました…」

少女は僅かに一礼するとすぐにどこかへと消えていった

「なにをする気?」

「何も、ただ探偵としての職務を行なうだけさ」

「……」

「彼の騎士の意思は未だ動かずか…」

そう呟いた彼女の声とともにこの事件はあまりにもあっさりと幕を閉じたのだった


(了)

第三章 閉幕

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